もしあなたがこれから建築家として大きく成長していこうとするのであれば、自走式立体駐車場についての知識を身に付けることは避けては通れない道だ。特にゼネコン設計部や組織系設計事務所に所属していたり、大規模なマンションや商業施設の設計を担当しているのであれば設計する機会は多いだろう。
しかし、立体駐車場は専門的で特殊な分野であるため、設計者であるあなたが全てを把握するのは難しい。基本的には立体駐車場メーカーの協力を仰ぐ形となるが、全てを丸投げして良いというワケではない。プロジェクトの全体をマネジメントする立場である設計者として、要点は必ずは押さえていなければならない。
しかし、忙しい日々に設計業務の中で、自分で一から調べて上げて、勉強する時間が無いのも事実だろう。今回はこのような問題を解決するために、設計者が最低限把握すべき、自走式立体駐車場の知識について解説していく。
立体駐車場にはどのような種類があるか?
立体駐車場は大まかに「機械式」と「自走式」の2種類に分類することができる。「機械式」とは1段、2段と上下に車を積み上げるタイプの駐車場の事を言う。上下方向のみに昇降するタイプや上下左右に移動するタイプなど様々な種類があるが、いずれにしても一度車から下りて収納しなければならず、利用者にとっては手間がかかる。
また、特殊な装置、機械が必要となるためコストは高い。しかし、面積に対する設置台数が多く、より効率的に駐車台数を確保することができるメリットがある。
一方、「自走式」は、車に乗りながら駐車ができるタイプで、自ら走行して駐車するということから「自走式」という名前が付けられている。機械式に比べて、駐車する際の手間が少なく利用者にとって使い易い方式だ。しかし、面積に対する設置台数が「機械式」と比べて少ないため、設置台数効率という意味では、機械式に比べて劣っているのが特徴だ。下記に自走式立体駐車場の種類について詳しく解説していく。
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フラット式
フラット式とは、各階の垂直移動を1つのスロープで行うタイプのことを言う。駐車スペースが平坦となるため駐車がしやすく、女性やお年寄りに向いた形式だ。しかし、単独でスロープの設置スペースが必要となるため、面積に対する設置台数が少なくなるというデメリットがある。広大な土地があるショッピングセンターや大規模マンションなどに向いている方式と言える。
連続傾床式
連続傾床式とは床自体がスロープとなり駐車スペースも緩やかに傾いたタイプのこと言う。水平移動のための車路と垂直移動のためのスロープが兼用されるので、余分なスペースが無く、面積に対する設置台数が最も多い。しかし、全ての床面に傾斜がついているため駐車がしにくいというデメリットがある。狭い土地でできるだけ多くの駐車スペースを確保したい場合に有効だ。事務所や工場など社員用の駐車場としては適しているが、不特定多数の人が利用する公共施設や商業施設の駐車場には適していない。
スキップ式
スキップ式は上述したフラット式と連続傾床式の中間のタイプと言える。各階の間に中間階を設け、そこに駐車スペースを設けることで、駐車台数を多く確保できるようにしたタイプだ。駐車スペースは傾床式とは異なり、平坦であるため、駐車もしやすくバランスの取れた方式と言える。マンションから商業施設、事務所など幅広く利用されている。
自走式立体駐車場タイプ別比較
駐車のしやすさ | 駐車台数 | |
フラット式 | ◎ | △ |
連続傾床式 | △ | ◎ |
スキップ式 | ◯ | ◯ |
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自走式立体駐車場と駐車場法の関係とは?
自走式立体駐車場を計画する上で必ず押さえておかなければならないのが「駐車場法」だ。駐車場法に該当する場合は、敷地が接道する道路の幅や車路の幅、スロープの勾配など、多くの制約がかかってしまう。
また、駐車場法に該当した場合、建設コストのアップはもちろのこと、その場所にお客様が要望する駐車台数を確保することができ無くなってしまう可能性がある。よって、まずはあなたが計画している立体駐車場が「駐車場法」に該当するかどうかを必ずチェックしなければならない。
自走式立体駐車場法の場合は「路外駐車場」に該当すると「駐車場」に該当する。まずは法文をチェックしてみよう。
駐車場法 第一章 第二条
二 路外駐車場 道路の路面外に設置される自動車の駐車のための施設であつて一般公共の用に供されるものをいう。
第二章 路外駐車場 第一節 構造及び設備の基準
第六条 この節の規定は、路外駐車場で自動車の駐車の用に供する部分の面積が五百平方メートル以上であるものに適用する。
続いて「駐車の用に供する部分」はどの部分が該当するのだろうか?これは一般的には駐車スペースとなる。つまり、スロープや車路は該当しない。通常の駐車スペースは2.3m✕5.5m程度なので1台辺りの駐車面積は12.6㎡。500÷12.6=約40台となる。
つまり不特定多数の人が利用する駐車場で駐車台数が40台程度になった場合は、路外駐車場に該当し、駐車場法が適用される可能性が高いので注意しなければならない。
因みに最初に「一般的に」と記述したのは例外があるからだ。駐車場法は特定行政毎に独自の基準を設けていることが多い。地域によっては車路やスロープも面積に加えなければならいという基準があるかもしれない。法文の解釈については必ず、建築主事に確認しなければならないことは頭に入れておこう。
では、路外駐車場に該当し駐車場法が適用された場合、どのような制約がかかるのだろうか?駐車場法施行令より重要なものを抜粋し下記に記載するので確認頂きたい。
下記場所に出入口を設けてはいけない(施行令第7条第1項)
- 交差点及び側端から5m以内(国土交通大臣が認めた場合は可能 )
- まがりかどから5m以内
- 横断歩道又は自転車横断帯及び前後の側端からそれぞれ前後に5m以内の部分
- 安全地帯の左側部分及び当該部分の側端からそれぞれ前後に10m以内の部分
- 乗合自動車の停留所又はトロリーバス若しくは路面電車の停留場を表示する標示柱又は標示板が設けられている位置から10m以内
- 踏切及び前後の側端からそれぞれ前後に 10m以内の部分
- トンネル、坂の頂上付近、軌道敷内
- 横断歩道橋(地下横断歩道を含む。)の昇降口から5m以内の道路の部分
- 幼稚園、小学校、特別支援学校、保育所、児童発達支援センター、情緒障害児短期治療施設、児童公園、児童遊園又は児童館の出入口から20m以内の部分。
- 幅員が6m未満の道路
- 縦断勾配が10%を超える道路
入り口と出口の配置について(施行令第7条第5項)
- 駐車スペースが6,000㎡を超える駐車場の場合は入り口と出口を10m以上離さなければならない。(但し、出入口に面する道路が中央分離帯等で進行方向別に分離されいている場合は除く)
出口の視認性の確保について(施行令第7条第7項 )
- 車が駐車場から出る時に道路を通る車及び歩行者に対する視認性を確保するために周辺に視界を遮るものを設置してはならない。
具体的には出口から2m後退した車路の中心線上における1.4mの高さにおいて、道路の中心線に直角に向かつて左右にそれぞれ60度以上の範囲内において、道路を通行する者の存在を確認できるようにしなければならない。
車路について(施行令第8条第2項、3項)
- 二方通行の車路の幅は5.5m以上確保すること
- 一方通行の車路の幅は3.5m以上確保すること
- 一方通行の車路で料金所が設置され歩行者が通行しない場合は幅2.75m以上確保すること
- 梁下の高さは2.3m以上確保すること
- 傾斜部の縦断勾配は17%を超えないこと
駐車の用に供する部分について(施行令第9条 )
- 梁下の高さは2.1m以上確保すること
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換気について施行令第12条 )
- 内部の空気を1時間に10回以上換気できる装置を設けるか、床面積の1/10以上の大きさの開口部を設置すること
照明について施行令第13条 )
- 車路の路面については10ルクス以上確保すること
- 駐車スペースの床面は2ルクス以上確保すること
自走式立体駐車場とバリアフリー新法の関係とは?
バリアフリー新法も駐車場法と同様に、立体駐車場を計画する上で重要な法律だ。下記の3つの条件全てに該当する場合、特定路外駐車場とみなされこの法律を遵守しなければならない。(バリアフリー新法第2条第11項)
- 一般公共の用に供されるもの(不特定多数の人が利用できる。)
- 自動車の駐車の用に供する部分(駐車スペース)の面積が500㎡以上
- 利用において料金を徴収するもの
では特定路外駐車場に該当する場合はどのような条件が必要となるのだろうか?下記に重要なもの抜粋して説明する。
車いす用駐車スペースの設置
- 幅3.5m以上の車いす用駐車スペースを1箇所以上設置し、付近にサインを設置すること。
構造及び設備に関する基準
車いす用駐車スペースから建物の入り口に至る経路については下記条件をみたさなければならない。
- 幅は、段に代わるものにあっては120㎝以上、段に併設するものにあっては90㎝以上とすること。
- 勾配は、1/12を超えないこと。ただし,高さが16㎝以下のものにあっては、1/8を超えないこと。
- 高さが75㎝を超えるもの(勾配が1/20を超えるものに限る。)にあっては、高さが75㎝以内ごとに踏幅が150㎝以上の踊場を設けること。
- 勾配が1/12を超え,又は高さが16㎝を超え、かつ、勾配が1/20を超える傾斜がある部分には、手すりを設けること。
自走式立体駐車場と大臣認定の関係とは?
自走式立体駐車場は殆どの場合、各メーカーが大臣認定品を取得している。大臣認定品とは建築基準法第68条の十に記載される「型式適合認定」のことで、これを取得することで、「耐火被覆の免除」「消火設備の簡易化」「建築確認申請の簡略化」のメリットがある。つまり建設コストを大幅に下げることができるのだ。
但し特殊な場合、例えば1階部分に商業施設が入っている複合施設となっている場合は、大手メーカーでも取得していないことが多い。そのようなケースの場合、個別認定という形で案件毎に大臣認定を取得する必要がある。
大臣認定の取得に関してはメーカーの担当者が粛々と進めてくれるので、設計者であるあなたが特にすることは無い。ただ、問題は取得するまでの期間だ。決して1、2ヶ月の短期間で取得できるものでは無く、設計が固まってから約半年程度の期間は必要となる。個別認定の取得期間がそのプロジェクトのクリティカルになることは良くあることだ。よって事前にメーカー担当者と綿密にスケジュールの確認をしなければならない。
自走式立体駐車場の設計料はどうすれば良いか?
自走式立体駐車場の詳細設計は、設計者であるあなたがする必要はない。メーカーの設計者に設計協力をしてもらうのが適切だ。しかしここで問題が生じる。いったいどこまでの範囲を無償で協力してもらえるのだろうか?
立体駐車場を除く一般的なメーカー品、例えばサッシュやメタルパーティション、建具類に関しては詳細図まで無償で協力してくれるのが常識だ。しかし立体駐車場となると話しは別となる。規模や手間を考えると、建材などの一般メーカー品と比較すると作業量は膨大となる。
そのため現状では、基本設計までは無償で協力してくれるが、実施設計に入る段階では、設計事務所からメーカーへ設計料を支払うということが常識となっている。一昔前まではメーカーが全て無償でやっていたようだが。。。
ということで、自走式立体駐車場の設計を行う際は、メーカーへ支払う設計料を含めて、施主に提示する設計料を設定しよう。赤字になってしまうことが無いように事前の準備は重要だ。
また、既にそのプロジェクトの施工会社が決まっている場合は例外であることは理解しておこう。施工会社のお抱え業社として、特定メーカーの受注が確実な場合は設計料が不要となることがよくある。いずれにしてもメーカー側も人件費というリスクを取りたくないという事情が裏にはあるのだ。
自走式立体駐車場はどのメーカーに頼めば良いか?
自走式立体駐車場を扱っているメーカーはたくさんある。鉄鋼会社や、大手ハウスメーカーの一部門であったり、もちろん立体駐車場それ自体を本業としているメーカーもある。では実際にどのようなメーカーに依頼をすれば良いのだろうか?ここからは、私の設計事務所勤務時代の経験による個人的な解釈であるため参考までに留めておいて欲しい。
オススメするのは立体駐車場事業を昔から営んでいる専門のメーカーだ。大手鉄鋼会社の一部門であっても古くから活動しているところは該当する。何故かというとやはり、自分達のスキルや専門性に対するプライドが高く総じて担当者のレベルが高い。特に営業担当でも設計や法規の詳細まで理解し対応できるほど教育が良くできている。
一方、大手のハウスメーカーの一部門として事業を開始が浅い場合は、営業担当のレベルが低く、設計者も提案力や技術力に欠けていることが多い。大手ハウスメーカーが立体駐車場専門の中小メーカーを買収して事業を立ち上げるケースもよくあるが、その様な場合でも、例えスキルがあっても社員の士気が低くかったりするのだ。下記に私が実際に接してみて対応が良かったメーカーを記載するので参考頂きたい。
立体駐車場は事業の一部だが、歴史もあり社員の士気が高く、特に営業担当に知識とレベルはピカイチ。
「雄建工業株式会社」
自走式立体駐車場専門のメーカー。多くの実績が特徴。経験を元にした適切な対応をしてくれる。
自走式立体駐車場のデザインについて
設計者にとって自走式立体駐車場のデザイン自由度は設計を進めていく上で最も気になる項目ではないだろうか?建築のデザインは主に内装と外装に分けることができる。自走式立体駐車場の場合、内装は特に気にする必要は無いだろう。
内装は機能上仕上げも不要であるし、認定品であれば鉄骨の耐火被覆も不要だ。鉄骨の柱、梁に溶融亜鉛メッキを施し、その上に塗装をするケースが殆どだ。 コストが厳しい場合は塗装を無くすケースもよくある。床に関しては、浸透性表面硬化剤を散布し、低コストでコンクリートの表面に強度をもたせ、素地を活かした仕上げとすることが多い。
続いて外観だ。外観については自走式立体駐車場ならではの規制があるので注意したい。消防庁の通達「110号通知」(平成18年3月17日消防予第110号)
を確認して頂きたい。
1 消火設備の設置について
次の(1)から(5)の全ての基準に適合する多段式の自走式自動車車庫(当該自走式自動車車庫と他の用途が同一棟に混在しない場合に限る。)にあっては、消防法施行規則(昭和36年自治省令第6号。以下「規則」という。)第18条第4項第1号「火災のとき著しく煙が充満するおそれのある場所」以外の場所及び規則第19条第6項第5号「火災のとき著しく煙が充満するおそれのある場所以外の場所」に含まれるものであり、また、その他の規定にかかわらず、泡消火設備、不活性ガス消火設備、ハロゲン化物消火設備又は粉末消火設備設置する場合にあっては、移動式の消火設備とすることができること。
(3) 外周部の開口部の開放性は、次のアからウの全ての基準を満たしていること。ただし、この場合において外周部に面して設けられる付帯施設が面する部分の開口部及び外周部に面して設けられているスロープ部(自動車が上階又は下階へ移動するための傾斜路の部分。以下同じ。)であって、当該スロープ部の段差部に空気の流通のない延焼防止壁などが設けられている場合、当該空気の流通のない延焼防止壁などを外周部に投影した当該部分の開口部は開口部とみなさないこと(別図1及び2参照)。
ア 常時外気に直接開放されていること。
イ 各階における外周部の開口部の面積の合計は、当該階の床面積の5%以上であるとともに、当該階の外周長さに0.5mを乗じて得た値を面積としたもの以上とすること。
ウ 車室の各部分から水平距離30m以内の外周部において12㎡以上の有効開口部(床面からはり等の下端(はり等が複数ある場合は、最も下方に突き出したはり等の下端)までの高さ1/2以上の部分で、かつ、はり等の下端から50㎝以上の高さを有する開口部に限る(別図3参照)。)が確保されていること(別図1参照)
つまり消防設備を移動式とするために外壁に開放性をもたさなければならないということになる。駐車場の床面積やコア部分の大きさ、プランニングにもよるが、殆どのケースにおいては、階高の半分以上は開口部にすることになるだろう。
これを無視してしまうと、上記の通り、泡消火設備、不活性ガス消火設備、ハロゲン化物消火設備又は粉末消火設備設が必要となり建設コストが大幅にアップしてしまう。このような設計はナンセンスだ。
よって外観デザインとしてはこの開口部を考慮して進めてなければらないので自ずとパターンは決まってくるので、無理に主張させることは無く、プロジェクト全体のデザインイメージに合わせるといった考えで進めるのが良いだろう。
参照 http://www.fdma.go.jp/html/data/tuchi1803/pdf/180317yo110.pdf
外壁材の種類について
外壁財の種類は格子手摺、カラー鋼板(ガルバニウム鋼板)、サンドイッチパネル、アルミルーバー、より選択することになる。当然のことながら後者になるほどコストは高くなるので、プロジェクト全体のグレード感とコスト感を把握しながら選択していこう。
最も安価な素材ではあるが、見た目はあまり良くない。コスト重視の場合、若しくは人の目に触れない部分については採用しても良いだろう。開放されているため、上述した通達「110号通知」の開放性の要件に含まれると思われがちではあるが、階高=HとしてH/2以下の部分は如何に開放されていても計算上を含むことはできないので注意したい。
いわゆるガルバニウム鋼板の壁面だ。耐久性や加工性は抜群でコストも安い。表面がフラットなものと折板となっているタイプがあり、取り付け方法としては、両脇の支持材間にはめ込む「落し込み工法」と背後の胴縁材に取り付ける「胴縁工法」がある。見た目をスッキリと見せたいのであれば胴縁工法が良いだろう。
サンドイッチパネルは2枚の鋼板の間に断熱材を挟み込んだ外壁材だ。幅は600mmが標準となる。最大の特徴はフラットな面により、整った外壁面を構成できる点と、1つの材料で断熱性まで確保しているという点だ。しかし自走式立体駐車場は外部扱いなので、断熱性の意味全く無い。またコスト的にも高価なものなので、コストに余裕があるプロジェクトでなければ使用はできないだろう。
アルミルーバーはこの中で最も高価なものだが、無表情な立体駐車場の外観に表情を持たせることができデザイン的な効果も高い。立体駐車場は一般的に景観上好まれないものとして認識されている。しかしこの素材を用いれば、そのマイナスイメージも払拭できるだろう。まちなかの目立つ部分で予算的に許されるのであれば設計者としては是非とも使いところだ。
壁面緑化は、最近になって自走式立体駐車場の外壁面に使われるようになった。条例上必要となる屋上の緑化が確保できない場合の補助的に役割を担うのと同時に、外観の威圧感を軽減する目的としてしも利用されている。対外的にも印象が良いのだが、数年経つと緑が枯れてしまうケースが続出している。この辺りはプランターの水はけなどメーカー側の改善に頼るしかないが、私としては積極的にオススメすることはできない。
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自走式立体駐車場の階数及び面積について
自走式立体駐車場の階数は◯◯層△△段といった呼び方をする。◯◯はいわゆる階数のことだ。1階建の場合は1層、2階建の場合は2層になる。△△屋上を含めた階数のことで1階建の場合は2段、2階建の場合は3段となる。つまり、1階建は1層2段、2階建は2層3段となる。この呼び方は建築基準法上は使わないが、消防法上使用され消防設備等の扱いに影響がある。
続いて問題となるのが面積だ。一般的な建物の場合、面積算定の基準は建物の壁心となる。しかし自走式立体駐車場の場合は、建物の柱芯を面積算定の基準とすることになっている。これは何故かというと、自走式立体駐車場の壁は、上述したように階高の半分程度が開放されているため壁では無く、手摺として判断されるからだ。
当然のことながら手摺部分は面積に含まれない。またそれに変わる壁が無いので、柱芯が面積算定の基準になる。ここは一般建物の設計に慣れている場合は間違いやすいので注意しよう。
また、当然のことながら建築基準法施行令2条1項4号ただし書き、同条3項の駐車場の延床面積に対する緩和は適用される。
四 延べ面積 建築物の各階の床面積の合計による。ただし、法第五十二条第一項 に規定する延べ面積(建築物の容積率の最低限度に関する規制に係る当該容積率の算定の基礎となる延べ面積を除く。)には、次に掲げる建築物の部分の床面積を算入しない。
イ 自動車車庫その他の専ら自動車又は自転車の停留又は駐車のための施設(誘導車路、操車場所及び乗降場を含む。)の用途に供する部分(第三項第一号及び第百三十七条の八において「自動車車庫等部分」という。)
3 第一項第四号ただし書の規定は、次の各号に掲げる建築物の部分の区分に応じ、当該敷地内の建築物の各階の床面積の合計(同一敷地内に二以上の建築物があ る場合においては、それらの建築物の各階の床面積の合計の和)に当該各号に定める割合を乗じて得た面積を限度として適用するものとする。
一 自動車車庫等部分 五分の一
つまり延床面積の1/5を限度に面積が免除されることなる。マンションやオフィスなど容積率が重要なポイントとなる物件に関して重要なので必ず把握しておこう。
最後に・自走式立体駐車場の計画について
建築家であるあなたにとって、自走式立体駐車場の設計依頼が単独であることは恐らくないだろう。殆どの場合は主となる建物の付属建築物としての扱いになる。また、専門性の高い分野でもあるので、建物の設計で忙しくしているあなたが全ての設計を担当するのは難しい。個別認定の取得が必要な場合は尚更だ。
であるが故に全てを自分でやろうとするのではなく、メーカーを上手く使いながら、効率よく計画を進めていかなければならない。上述したように、その方式によって建設コストや設置台数、使いやすさも大きく異なってくる。
また、デザイン的にも大きな制約があるので、色気を求めるのではなく、主となる建物のデザインにできるだけ合わせるといった気持ちで進めた方が上手くいくだろう。自走式立体駐車場はコスト、機能性、スケジュールこの3点を優先して進めていくことで、プロジェクト全体が円滑に進めることができるということを頭に入れて設計作業を進めていって欲しい。
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一級建築士
不動産コンサルティングマスター
一級建築士としての経験を活かした収益物件開発、不動産投資家向けのコンサルティング事業、及びWEBサイトを複数運営。建築・不動産業界に新たな価値を提供する活動を行う。