ある場所に建築計画をしようと思ったら、建築協定が結ばれている地域であり、再度調べ直したなんて事はよくある話ではないだろうか。
建築技術者における施主の信頼というものは、やはり知識や経験を持っている事である。「あの人に聞けば何でも教えてくれる」「あの人に聞けば何でも解決してくれる」そのような建築技術者は施主から信頼され、頼りにされるだろう。
今回は、建築協定とはなんであるのかを主題に、知識を深めていくポイントを紹介していく。
建築協定を言葉だけ知っている人、建築協定を少しだけ説明できる人からでも大丈夫なように、初歩的な部分からの解説をしていくので、知識を深めていただき、施主から頼られる人材になっていただきたい。
①建築協定とは?
建築協定を一言でいうとすると「建築行為に対する地権者等による自主ルールを結ぶこと」の事である。
建築行為に対する法規制は、建築基準法を頂点とし、市町村条例やその他要綱等により、法的な拘束力をもった規制をかける事になっている。
当然、建築基準法と市町村条例等は、建築物の安全性や市町村単位での状況を加味した計画となるように配慮はされているが、条例等を持っても規制しきれない内容や特別な配慮を施す必要性がある場合においては、計画をコントロールする事は難しい。
このような背景を受けて、その地域や土地にあった建築協定を締結する事で、独自のルールが形成可能となるものである
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②法令を確認しよう
ここでは、建築協定の法律を確認していこう。
建築協定は、建築基準法の第69条から第77条の中で定められている。
条文を要約しながら確認を進めていく。
第69条<目的>
市町村は、その区域の一部について、住宅地としての環境又は商店街としての利便を高度に維持増進する等建築物の利用を増進し、かつ、土地の環境を改善するために必要と認める場合においては、土地の所有者及び借地権を有する者・・・・・・・が当該土地について一定の区域を定め、その区域内における建築物の敷地、位置、構造、用途、形態、意匠又は建築設備に関する基準についての協定(以下「建築協定」という。)を締結することができる旨を、条例で、定めることができる。
第69条は、市町村が土地の環境や価値を高められると認める場合は、建築協定を締結できることを条例で定められるとしている。
ここで大事なのは、
建築協定で定める事が出来るのは
「建築物の敷地、位置、構造、用途、形態、意匠又は建築設備」についてのみである。
又、建築基準法の規制を緩和するような事はできないので注意が必要だ。
第70条 <建築協定の認可の申請>
前条の規定による建築協定を締結しようとする土地の所有者等は、協定の目的となっている土地の区域(以下「建築協定区域」という。)、建築物に関する基準、協定の有効期間及び協定違反があつた場合の措置を定めた建築協定書を作成し、その代表者によって、これを特定行政庁に提出し、その認可を受けなければならない。
2 前項の建築協定書においては、同項に規定するもののほか、前条の条例で定める区域内の土地のうち、建築協定区域に隣接した土地であって、建築協定区域の一部とすることにより建築物の利用の増進及び土地の環境の改善に資するものとして建築協定区域の土地となることを当該建築協定区域内の土地の所有者等が希望するもの(以下「建築協定区域隣接地」という。)を定めることができる。
3 第一項の建築協定書については、土地の所有者等の全員の合意がなければならない。ただし、当該建築協定区域内の土地(土地区画整理法第九十八条第一項の規定により仮換地として指定された土地にあっては、当該土地に対応する従前の土地)に借地権の目的となっている土地がある場合においては、当該借地権の目的となっている土地の所有者以外の土地の所有者等の全員の合意があれば足りる。
4 第一項の規定によって建築協定書を提出する場合において、当該建築協定区域が建築主事を置く市町村の区域外にあるときは、その所在地の市町村の長を経由しなければならない。
1項では、建築協定書を作成したら特定行政庁の認可を受ける事。
2項では、建設協定区域隣接地の件
3項では、建築協定書は、土地所有者全員の合意がなければならない事。
4項では、建築主事を置かない市長村の場合は、市町村長経由で出す事。
第71条 <申請に係る建築協定の公告>
市町村の長は、前条第一項又は第四項の規定による建築協定書の提出があつた場合においては、遅滞なく、その旨を公告し、二十日以上の相当の期間を定めて、これを関係人の縦覧に供さなければならない。
第72条 (公開による意見の聴取)
市町村の長は、前条の縦覧期間の満了後、関係人の出頭を求めて公開による意見の聴取を行わなければならない。
2 建築主事を置く市町村以外の市町村の長は、前項の意見の聴取をした後、遅滞なく、当該建築協定書を、同項の規定による意見の聴取の記録を添えて、都道府県知事に送付しなければならない。この場合において、当該市町村の長は、当該建築協定書の内容について意見があるときは、その意見を付さなければならない。
第71条では建築協定書の提出があった場合は、公に公開することとされている。
第72条では、市町村長は公開意見聴取をしなさいと定められている。
第73条 (建築協定の認可)
特定行政庁は、当該建築協定の認可の申請が、次に掲げる条件に該当するときは、当該建築協定を認可しなければならない。
一 建築協定の目的となっている土地又は建築物の利用を不当に制限するものでないこと。
二 第六十九条の目的に合致するものであること。
三 建築協定において建築協定区域隣接地を定める場合には、その区域の境界が明確に定められていることその他の建築協定区域隣接地について国土交通省令で定める基準に適合するものであること。
2 特定行政庁は、前項の認可をした場合においては、遅滞なく、その旨を公告しなければならない。(略)
3 第一項の規定による認可をした市町村の長又は前項の規定によって建築協定書の写の送付を受けた市町村の長は、その建築協定書を当該市町村の事務所に備えて、一般の縦覧に供さなければならない。
第73条では、特定行政庁は理に適っている場合は、建築協定を認可しなさいと定められている。
第74条 (建築協定の変更)
建築協定区域内における土地の所有者等は、前条第一項の規定による認可を受けた建築協定に係る建築協定区域、建築物に関する基準、有効期間又は協定違反があつた場合の措置を変更しようとする場合においては、その旨を定め、これを特定行政庁に申請してその認可を受けなければならない。
2 (略)
第74条では、建築協定の内容を変更する場合は、申請して認可を受けなさいと定められている。
第75条 (建築協定の効力)
第73条第2項またはこれを準用する第74条第2項の規定による認可の公告(次条において「建築協定の認可等の公告」という。)のあつた建築協定は、その公告のあつた日以後において当該建築協定区域内の土地の所有者等となった者(当該建築協定について第七十条第三項又はこれを準用する第七十四条第二項の規定による合意をしなかった者の有する土地の所有権を承継した者を除く。)に対しても、その効力があるものとする。
第75条は、建築協定が組まれた後にその土地を所有したものに対しても効力が及ぶとしている。
(建築協定の認可等の公告のあつた日以後建築協定に加わる手続等)
第75条の2 建築協定区域内の土地の所有者(土地区画整理法第98条第一項の規定により仮換地として指定された土地にあっては、当該土地に対応する従前の土地の所有者)で当該建築協定の効力が及ばないものは、建築協定の認可等の公告のあつた日以後いつでも、特定行政庁に対して書面でその意思を表示することによって、当該建築協定に加わることができる。
2 建築協定区域隣接地の区域内の土地に係る土地の所有者等は、建築協定の認可等の公告のあつた日以後いつでも、当該土地に係る土地の所有者等の全員の合意により、特定行政庁に対して書面でその意思を表示することによって、建築協定に加わることができる。ただし、当該土地(土地区画整理法第98条第一項の規定により仮換地として指定された土地にあっては、当該土地に対応する従前の土地)の区域内に借地権の目的となっている土地がある場合においては、当該借地権の目的となっている土地の所有者以外の土地の所有者等の全員の合意があれば足りる。
3 建築協定区域隣接地の区域内の土地に係る土地の所有者等で前項の意思を表示したものに係る土地の区域は、その意思の表示があつた時以後、建築協定区域の一部となるものとする。
4 第73条第2項及び第3項の規定は、第一項又は第二項の規定による意思の表示があつた場合に準用する。
5 建築協定は、第1項又は第2項の規定により当該建築物に加わった者がその時において所有し、又は借地権を有していた当該建築協定区域内の土地(土地区画整理法第98条第1項の規定により仮換地として指定された土地にあっては、当該土地に対応する従前の土地)について、前項において準用する第73条第2項の規定による公告のあった日以後において土地の所有者等となった者(当該建築協定について第2項の規定による合意をしなかったた者の有する土地の所有権を承継した者及び前条の規定の適用がある者を除く。)に対しても、その効力があるものとする。
第75条の2
1項は、建築協定区域内で効力が及ばないものはいつでも参加する事ができる。
2項は、建築協定隣接地の土地所有者は、建築協定に参加する事ができる。
第76条 (建築協定の廃止)
建築協定区域内の土地の所有者等(当該建築協定の効力が及ばない者を除く。)は、第七十三条第一項の規定による認可を受けた建築協定を廃止しようとする場合においては、その過半数の合意をもつてその旨を定め、これを特定行政庁に申請してその認可を受けなければならない。
2 特定行政庁は、前項の認可をした場合においては、遅滞なく、その旨を公告しなければならない。
第76条では、建築協定を廃止する場合について書かれている。
(土地の共有者等の取扱い)
第76条の2 土地の共有者又は共同借地権者は、第70条第二項(第74条第2項において準用する場合を含む。)、第75条の2第1項及び前条第1項の規定の適用については、合わせて一の所有者又は借地権者とみなす。
(建築協定の設定の特例)
第76条の3 第69条の条例で定める区域内における土地で、一の所有者以外に土地の所有者等が存しないものの所有者は、当該土地の区域を建築協定区域とする建築協定を定めることができる。
2 前項の規定による建築協定を定めようとする者は、建築協定区域、建築物に関する基準、協定の有効期間及び協定違反があつた場合の措置を定めた建築協定書を作成し、これを特定行政庁に提出して、その認可を受けなければならない。
3 前項の建築協定書においては、同項に規定するもののほか、建築協定区域隣接地を定めることができる。
4 第70条第四項及び第71条から第73条までの規定は、第2項の認可の手続に準用する。
5 第2項の規定による認可を受けた建築協定は、認可の日から起算して3年以内において当該建築協定区域内の土地に二以上の土地の所有者等が存することとなった時から、第73条第2項の規定による認可の公告のあつた建築協定と同一の効力を有する建築協定となる。
6 第74条及び第76の規定は、前項の規定により第73条第2項の規定による認可の公告のあつた建築協定と同一の効力を有する建築協定となった建築協定の変更又は廃止について準用する。
(建築物の借主の地位)
第77条 建築協定の目的となっている建築物に関する基準が建築物の借主の権限に係る場合においては、その建築協定については、当該建築物の借主は、土地の所有者等とみなす。
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③建築協定のある土地での建築手続きについて
この記事をお読みである方が、建築主や設計者であるならば、建築したいという土地に建築協定が掛っているかどうかは気になる所だろう。
ここでは、建築協定のある土地での手続きについて、まとめていきたいと思う。
- 建築協定地であるかの確認方法
市町村の都市計画課等に行き、用途地域等の調査と合わせて確認する事ができる。
- 建築協定の詳細について
その土地における、建築協定詳細については大体、冊子等になりまとめられているパターンが多い。市町村により異なるが、建築指導課、都市計画課、開発調整課等の名前に近いところで資料を入手できる。
- 建築協定の土地での建築手続きについて
建築物を建築する為には、確認申請等が必要な事はご存じの事だろう。建築協定については、運営者が個人等である事から、市町村等が具体的な手続きについては定めていない事が多いが、確認申請事務上、建築協定による規制事項についてどのように事務処理をしたのかは当然の事として求められることであるので一般的な流れをここで紹介する。
建築協定は、運営委員会という所が建築協定成立と共に定められている為、市町村の担当課に問い合わせせればその連絡先を教えていただける。
その運営委員会に計画の内容を説明し、書面等で承諾を得て、確認申請書類に添付する形となる。
④建築協定と地区計画の違い
建築協定という言葉をご存知のように、皆さんは地区計画という言葉もご存じの事だろう。
地区計画と建築協定を混同してしまっている方も多いのではないだろうか。
ここでは、地区計画と建築協定の違いを分かりやすくまとめていきたい。
地区計画とは
建築物の高さや用途の制限などきめ細かなルールを定めたり、地区内に必要な道路や公園等を「地区施設」として位置づけることにより、地区の特性を活かした街づくりを進める制度の事をいう。自治体が主体となって運営する公的な制度であり、区域内で建築行為等を行う場合には、その内容を事前に市町村長に届け出ることが都市計画法で義務付けられている。
地区計画と建築協定比較表
区分 | 地区計画 | 建築協定 |
根拠法 | 都市計画法・建築基準法 | 建築基準法 |
目的 | 地区の将来像を、住民と市町村が一体となりまちづくりを進めていく手法 | 協定者が主体となって、まちづくりを進めていく手法 |
位置付 | 「都市計画」として規定 | 「私的契約」的 |
主体者 | 市長村等 | 協定者 |
合意形成 | 地区関係住民の合意形成を必要とする原則、地区関係住民全員の同意を必要とする(自治体による) | 協定者全員の合意を必要とする |
改廃要件 | 都市計画の変更手続きが必要 | 変更:協定者全員の合意が必要廃止:協定者の過半数の合意が必要 |
効力範囲 | 都市計画決定後、地区内のすべての土地所有者等に効力が及ぶ | 認可広告後に区域の土地所有者等となったものにも効力が及ぶ成立時に合意の得られなかった区域には効力が及ばない |
有効期間 | 特に定めはない | 協定者が任意に決める |
運営主体 | 市町村が通常の行政として運営する。 | 協定者が構成する委員会等で運営する |
違反措置 | 市町村が行う | 上記委員会が行う建築基準法による是正対象とはならない |
地区計画と建築協定それぞれの課題点
- 建築協定
締結、協定の運営に至るまで、住民主導で行われるため、地域コミュニティーのまとまりや住民間のつながりが強まるといえる。しかし、合意していない区画を含んだ場合、いびつな地域コミュニティーが継続することになると言える。
- 地区計画
地区計画の場合、全員あるいは大部分の合意・理解を背景に、さらに空間的にまとまった範囲で、地区計画を締結・運営することになり、一定のコミュニティーが形成される。
地区計画決定後は、住民が関与する部分が希薄であるため、まちづくりへの住民の関心は少なくなり、地域コミュニティーの熟成はあまり期待できない。
建築協定と地区計画の他にも、街並みを守るために協定を定めていることがある。
東京都世田谷区成城では、街並みを守る為に、住民が「成城憲章」という協定を定めている。これが俗にいう、「紳士協定」である。
紳士協定とは、将来にわたって地域の住環境を保全し、魅力のある個性的なまちづくりを進めるために住民同士が申し合いをして取り決めたものである。根拠となる法律がない任意協定で、役所の認可などは受けていないが、上記の成城憲章のように自治体が認定したうえで広報や助言などの支援をしているケースもある。「任意の建築協定」や「まちづくり協定」あるいは「まちなみ協定」などと呼ばれていることもある。
任意であるために適用範囲は、認可を受けている建築協定よりも広く、駐車場の周辺整備への配慮など建築に関することだけにとどまらない。
しかし、任意協定によるルールは地域の当事者同士で守ることが必要で、違反者に対して法的な対処はできない。そのため、自治体が違反者に対して指導をすることもない。また、任意協定の効力はそれに合意した者のみが対象となり、新たに敷地を購入した者に対しては効力が及ばない。
⑤各地の建築協定を知る
国土交通省のホームページをみると、平成20年3月31日時点で有効な建築協定の数は2,800ともいわれている。
各住民が一丸となって、無秩序な建築が進まないように、街を守っている事が数の多さからも伺える。
建築協定区域というと、住宅地が大半の様に感じてしまうが、商業地や工業地にも存在するようである。
ここでは、各地域の建築協定を紹介しておきたい。
商業地型
- 浦安市美浜・入船商業地区建築協定(千葉県浦安市)
〇目的
浦安市美浜・入船地区は、JR京葉線新浦安駅の開設により、道路・広場等の公共施設や住宅の整備が行われ、浦安市の新都心としての高度利用が行われている地域である。
地区全体は、「商業・業務地区」「住宅地区」「商住併存地区」に分けられている。この建築協定は、主に「商業・業務地区」に適用しているものであるが、地区としての統一性を保つ為にこの建築協定が作られている。
〇協定内容
・敷地の制限:敷地の最小面積は、500㎡とする。
・位置の制限:建築物の外壁又はこれに代わる柱の面の道路境界線からの後退距離は、別図に示す距離とする。ただし、公共用歩廊については、この限りではない。
・建築物の高さの制限:建築物の高さの最低限度は、9mとする。
・日影による建築物の高さの制限:建築物は、表に示す範囲において、冬至日の真太陽時における午前8時から午後4時までの間において、同表に示す時間以上の日影を生じさせることのないものとしなければならない。ただし、同一の敷地内に二以上の建築物がある場合においては、これらの建築物を一の建築物とみなす。
・垣、さく等の構造の制限:塀は、生け垣又はネットフェンス等透視性のあるものとし、壁面後退により生じたスペースに設置する場合は生け垣とし、歩行者空間の連続性を損なわないものとする。
・建築物の用途の制限:建築物は、次に掲げる用途に供してはならない。
イ風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律に規定する営業
ロ工場。ただし、自家販売のために食品製造業( 食品加工業を含む。)を営むパン屋、米屋、豆腐屋、菓子屋その他これらに類するもの又は美術品、工芸品を製作するためのアトリエ、工房を除く。
ハ倉庫業を営む倉庫
二住宅
ホ共同住宅、寄宿舎又は下宿
・建築物の形態、意匠の制限:建築物の外壁及び屋根の形、色、材料等については、地区全体の調和を図るよう努めるものとする。
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●南笠ニュータウン建築協定(滋賀県草津市)
〇目的
琵琶湖近くに位置するこのニュータウンは、住宅街である良好な環境を保つ為に、建築協定を締結している。
〇協定内容
建築物の敷地:本協定の締結時の別添区域図に示す区画とし、この区画を分割してはならない。
建築物の用途:専用住宅または店舗併用住宅もしくは医院併用住宅で、かつ一戸建でなければならない。
敷地地盤高:本協定の締結時の地盤高を変更してはならない。ただし、造園および車庫の築造等による一部の変更はこの限りでない。
その他:
・擁壁の天端外側から垂直に立ち上がる線から外周方向へはみ出してはならない。ただし、屋根、庇についてはこの限りではない。
・建築物の外壁面または、これに代わる柱の面から敷地境界線までの距離(以下「外壁の後退距離」という。)については、境界線から0.8m以上とする。ただし、外壁の後退距離の限度に満たない距離にある建築物又は建築物の部分が次のいずれかに該当する場合は、この限りではない。
(a)外壁又はこれに代わる柱の中心線の長さの合計が4m以下であること。
(b)物置その他これに類する用途に供し、軒の高さが2.5m以下で、かつ床面積の合計が5㎡以内であること。
(c)道路の隅切部分であること。
・建築物の地盤面からの高さは、10m以下とすること。
・門、車庫等の扉は開放時に敷地境界線を越えないこと。
・境界に面する場所に垣または棚を設ける場合、その構造は生垣または、フェンスその他見通しを妨げない構造とし、土塀、コンクリート塀、板塀等にしてはならない。ただし、門柱及び意匠上これに付属する部分ならびに高さ40㎝以下の上記フェンスの基礎石はこの限りではない。
・擁壁のある宅地においては、車輌及び人の出入口を設置する場合を除き擁壁の形状を変えてはならない。
・建築物、門、物置等の色彩および形態は周囲の環境に調和し、かつ良好な住宅地にふさわしいものでなければならない。
工業団地型
- 戸塚工業団地建築協定(神奈川県横浜市戸塚区)
〇目的
戸塚工業団地は横浜市都心部の南西約20kmの内陸部にあって、横浜市内陸部工業地域の7大拠点のひとつとして位置付けられているが、区のまちづくり計画においても、地域と共生できる工業関係が求められていることが理解できる。
団地周囲には住宅地が立ち並び、地域環境との調和が求められ、建築協定が締結されている。
〇協定内容
・用途:協定区域内においては,次の各号に掲げる用途に供する建築物は,建築してはならない。
(1) 住宅,共同住宅,寄宿舎又は下宿
(2) 物品販売店を営む店舗又は飲食店
(3) マージャン屋,ぱちんこ屋,射的場その他これらに類するもの
(4) ボーリング場,スケート場又は水泳場
(5) ガソリンスタンド
(6) 集会場その他これらに類するもの
(7) 畜舎
・構造:建築物の主要構造部は、鉄骨、鉄筋コンクリート等の不燃材料としなければならない。ただし、建築物の延べ面積が20平方メートル以内の物置その他の附属建築物については、この限りでない。
・意匠:建築物の意匠は、周囲の環境との調和を図るよう努めなければならない。
・建築設備:建築物には、騒音、振動、汚水、廃液、ばい煙、粉じん、ガス、臭気等による公害を防止するための、必要な設備を設置しなければならない。
・敷地の緑化等:建築物の敷地内の緑地面積は、敷地面積の100分の15以上とし、その緑地については道路境界線沿いを優先に配置する。また、これを良好に管理するよう努めなければならない。
・建築物の外壁等の位置:建築物の外壁又はこれに変わる柱の面から道路境界線までの距離は次のとおりとする。
- 区域図に示す幅員8メートル以上の道路の道路境界線から建築物の外壁又はこれに代わる柱の面までの距離は3メートル以上とする。
- その他の道路及び隅切り部分の道路境界線から建築物の外壁又はこれに代わる柱の面までの距離は2メートル以上とする。
・門又は塀の構造:門又は塀を設ける場合は、次の各号によらなければならない。ただし、 防音等のため、第13条に定める委員会と協議の上、 必要と認めるものについてはこの限りでない。
(1) 門又は塀の高さは1.5メートル以下とする。
(2) 塀の構造は金網等の透視性のあるものとし、コンクリート又はブロック造のものは禁止する。ただし、基礎、擁壁部分についてはこの限りでない。
宿泊施設型
- 民泊等に関する京都市上京区―松町地区建築協定(京都府京都市)
〇目的
住宅宿泊事業法が平成30年6月15日から施工された、運営まもなくで制度は整っているとは言えないが、地域によっては部外者が入りこむことを懸念する地域もある。京都御所に近いこの地域では、環境を守る為に、民泊に用に供する住宅を禁止している。
〇協定内容
建築協定区域内の建築物の用途は,次に掲げるものにしてはならない。
⑴ 住宅宿泊事業法第3条第1項の届出を行って営む住宅宿泊事業の用に供するもの
⑵ ホテル又は旅館
まとめ
建築協定についての知見を深めていただく為に、法律、地区計画との違い、事例を紹介してきた。
建築をする土地は本来個人の物である為に、自分の土地をどのようにするかについては、その人次第であるという考え方も当然の事としてあるだろう。
だが、この建築協定というものは、同じ思いを持つという事での約束みたいなものであり、規制という概念では無く、自主的に良くしようという思いが込められているものであろう。
建築主であれ、設計者であれ、建築協定があるから手続きを守るというだけでなくその地域が持つ思いをくみ取る事が出来れば、更なるまちづくりの一助となる。
この記事が、知識を深めると共に、そのような思いを抱く一助になればと思う。
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一級建築士
不動産コンサルティングマスター
一級建築士としての経験を活かした収益物件開発、不動産投資家向けのコンサルティング事業、及びWEBサイトを複数運営。建築・不動産業界に新たな価値を提供する活動を行う。