型式適合認定を取っているものは、建築基準法の中で確認申請等審査を簡略化する事ができる。法令上に記載されている事は知っているが、中々利用する機会も少なくなじみが薄いのが現状であろう。
「型式適合認定」は建築基準法に基づき、建築材料や主要構造部、建築設備等の型式について、一定の建築基準に適合していることをあらかじめ審査し、認定することであるが、
型式適合認定を受けているものって何があるの?どんなメリットがあるの?そんな質問をされた時、咄嗟に答える事はできるだろうか。
知っているようで知らない人が多いこの型式適合認定について深く掘り下げ、理解を広げていきたい。
型式適合認定を持っている建築物は建築確認申請の審査が簡略化される
型式適合認定について語る上で、最重要なポイントは「型式適合認定を持っている建築物は建築確認申請の審査が簡略化される」という事である。建築基準法第6条の4の中には、建築物の建築に関する確認の特例として、「型式適合認定」「4号建築物」として審査の簡略化をする為の特例を定めている。
これは、「型式適合認定」については、一定の基準において作られたものについて認定を得ているものは、性能等の基準が審査機関等によって担保されているものであるので、更にそれを審査するまでもないという考え方である。
「4号建築物」は比較的小さな建物については、建築士の責任において設計をされていれば特段の審査は必要ないであろうとの考え方に基づくものである。
まずは、「型式適合認定を持っている建築物は建築確認申請の審査が簡略化される」を押さえていただきたい。
この制度の目的は、申請者の負担軽減に基づくものである。
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型式適合認定とは?
型式適合認定という言葉は、建築を業としているものであれば当然の事として知っているだろう。では、それを説明できるかが問題となる。
ここからは、型式適合認定の概要について理解をしよう。
まずは、建築基準法において、言葉が定義されているので確認をする。
(型式適合認定)
第68の10 国土交通大臣は、申請により、建築材料又は主要構造部、建築設備その他の建築物の部分で、政令で定めるものの型式が、前三章の規定又はこれに基づく命令の規定(第六十八条の二十五第一項の構造方法等の認定の内容を含む。)のうち当該建築材料又は建築物の部分の構造上の基準その他の技術的基準に関する政令で定める一連の規定に適合するものであることの認定(以下「型式適合認定」という。)を行うことができる。
<条文引用:houko.com (http://www.houko.com/00/01/S25/201.HTM)>
この条文が示すのは、「建築物(の部分)が、構造耐力、防火・避難など一連の規定に適合すること」をあらかじめ国土交通大臣(指定認定機関が指定されている場合は同機関)が認定するとしている。
この法律の効果として、国土交通省は以下のように発表している。
・建築確認において、「一連の規定」の審査が省略される。検査も同様。
・ただし、認定を受けた型式に適合するかどうかの照合(設計仕様・工事内容が認定書の内容と適合することの審査・検査)は必要となる。
(型式部材等製造者の認証)
第68の11 国土交通大臣は、申請により、規格化された型式の建築材料、建築物の部分又は建築物で、国土交通省令で定めるもの(以下この章において「型式部材等」という。)の製造又は新築(以下この章において単に「製造」という。)をする者について、当該型式部材等の製造者としての認証を行う。
2 前項の申請をしようとする者は、国土交通省令で定めるところにより、国土交通省令で定める事項を記載した申請書を提出して、これを行わなければならない。
3 国土交通大臣は、第一項の規定による認証をしたときは、国土交通省令で定めるところにより、その旨を公示しなければならない。
<条文引用:houko.com (http://www.houko.com/00/01/S25/201.HTM)>
この条文が示すのは、企画化された型式の建築物(の部分)を製造・新築する者として国土交通大臣(指定認定機関が指定されている場合は同機関)が認証するとしている。
この法律の効果として、国土交通省は以下のように発表している。
・建築確認において、認証に係る型式に適合するものとみなされ、「一連の規定」の審査において認証に係る型式との照合が省略される。(構造規定などの単体規定は認証書が提出されていることを確認するのみ)
・建築士である工事監理者が設計図書の通りに施工された事を確認した場合には、検査において認証に係る型式との照合が省略される。
・ただし、認証を受けた製造者は、その認証に係る型式通りに製造・新築する「型式適合義務」を負う。
ちなみに、型式適合認定を取得する際の申請先として、指定認証機関等が定められているので、そちらの会社を一部紹介しておきたい。
法人の名称 : 財団法人 日本建築センター
指定・登録時期 : 平成12年6月16日
法人の連絡先 : 東京都港区虎ノ門3-2-2 第30森ビル
法人の名称 : 財団法人 建材試験センター
指定・登録時期 : 平成12年6月16日
法人の連絡先 : 東京都中央区日本橋茅場町2-9-8 友泉茅場町ビル
法人の名称 : 財団法人 ベターリビング
指定・登録時期 : 平成12年6月16日
法人の連絡先 : 東京都千代田区二番町4-5 相互二番町ビル
法人の名称 : 財団法人 日本建築総合試験所
指定・登録時期 : 平成12年6月29日
法人の連絡先 : 大阪府大阪市中央区南新町1-2-10
法人の名称 : 財団法人 日本建築設備・昇降機センター
指定・登録時期 : 平成12年6月29日
法人の連絡先 : 東京都港区虎ノ門1-13-5 第一天徳ビル
法人の名称 : 財団法人 日本住宅・木材技術センター
指定・登録時期 : 平成12年6月29日
法人の連絡先 : 東京都港区赤坂2-2-19 アドレスビル
ここで、建築に精通している方なら、「型式適合認定」と「大臣認定」など色々言葉があるが複雑で良くわからないという方もおられるだろう。
ここでは、階段昇降機を例にあげて、説明をしたいと思う。
階段昇降機の確認申請を取得する場合、建築基準法に当然合致している必要があるが、まず建築基準法68条の26に示す、例示仕様に適合していれば確認申請が取得可能である。例示仕様に適合しない場合は、国土交通大臣の構造方法等の認定を取れば確認申請が取得可能である。更にここで型式適合認定を取得しているものであれば審査が簡略化される。
「型式適合認定」「大臣認定」「例示仕様」など建築実務では様々な言葉が出てくるが、しっかりと区別をしておきたい。
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型式適合認定の対象とするものとは?
ここまで説明をすると、型式適合認定を取得している材料等ばかり使えば、非常に申請が楽になるのではないかと思う所であろう。
では、型式適合認定はどの範囲までをカバーしているのだろうか?
大きく以下の3分類に分ける事ができるので確認していただきたい。
・建築物の部分の設計仕様が、構造・防火・設備等の一連の規定に適合することについて型式適合認定を行うもの。パネル、プレハブ住宅、戸建住宅の標準設計などがこれに該当する。
・建築設備、防火設備等で、構造・防火・設備等の一連の規定に適合することの認定を受け、かつ型式部材等製造者認証を受けることが想定されるもの。エレベーターやエスカレーター、防火戸などの防火設備、非常用の照明装置、給水タンク、浄化槽等がこれに該当する。
・準用工作物の部分で、準用される構造・防火・設備等の一連の規定に適合することの認定を受け、かつ型式部材等製造者認証を受けることが想定されるもの。観光のためのエレベーターや遊戯施設などがこれに該当する。
皆さんも当然のごとく知っている事であったであろう。そんなに範囲は広くないのが現実的な所である。
型式適合認定を取得しているものはどんなメリットがあるのか?
型式適合認定を取得しているものは、建築確認の審査などでメリットがあるとは前述の通りであるが、具体的にどのようなメリットがあるのかを例を上げて説明をしていきたい。
例えば、換気システムを住宅に採用しようとする場合に、設計から確認申請にいたるまでどのようなメリットがあるのだろうか。
・型式適合認定がない換気システムを使おうとする場合
一般的には以下のような流れにそって、業務を進めていく
①設置する住宅の対象空間の気積を算出
②対象空間の気積から必要換気量を算出
③必要換気量から換気システムを選定
④ダクト経路と給気グリル数を決定
⑤ダクト圧力損失を計算
⑥必要換気量の確保を確認
⑦ダクト圧力損失計算書を作成
⑧確認申請書類に添えてダクト圧力損失計算書を提出
・型式適合認定がある換気システムを使おうとする場合
一般的には以下のような流れにそって、業務を進めていく
①設置する住宅の対象空間の気積または対象床面積を選定
②対象空間の部屋数または給気グリル数を確認
③決定したダクト経路が施工条件内かを確認
④型式適合認定番号を確認申請書提出時に記載
このように比較をするだけでも、型式適合認定の換気システムを採用するだけでも、業務を大きく削減できる事は一目瞭然であろう。自分が設計等をする中で、積極的に採用ができそうであれば選択肢の一つとして考えてよいだろう。
型式適合認定を取得しているものリスト
具体的にどのような会社が、どのような型式適合認定を取っているかをまとめてみたので参考にされたい。詳しくは各社のホームページを参照してほしい。
尚、ここに示したのは一例に過ぎず型式適合認定を取得しているものは多数ある。
自分が設計しているものに、型式適合認定商品を使おうとする時は、メリットがあることを認識しておいていただきたい。業務の効率化につながるであろう。
■換気設備
①会社名:パナソニック株式会社
・商品名:Q-hiセントラル換気システム
・メーカホームページ:https://sumai.panasonic.jp/air/kanki/119/nintei/index.html
②会社名:三菱電機株式会社
・商品名:ロスナイセントラル換気システム
・メーカホームページ:
http://www.mitsubishielectric.co.jp/ldg/ja/air/products/ventilationfan/recognitionsystem/index.html
■浄化槽
①会社名:株式会社 ダイキアクシス
・商品名:ダイキ浄化槽 XE型・XC型・DCX型・CN2型・CR2型・・・・
・メーカホームページ:http://www.daiki-axis.com/drain/manual/index.html
②会社名:株式会社 クボタ
・商品名:クボタ浄化槽 KZ型・KJ型・HCZ型・・・・・
・メーカホームページ:http://jokaso.kubota.co.jp/jokaso/index.html
■昇降機
①会社名:株式会社 メイキコウ
・商品名:段差らくーだ
・メーカホームページ:http://www.meikikou.co.jp/racooda/model_type/
②会社名:株式会社 スギヤス
・商品名:直線いす式用電動昇降機
・メーカホームページ:http://www.bishamon.co.jp/iso9001.html
■立体駐車場
①会社名:株式会社 北川鉄工所
・商品名:一般立体駐車場 PF型・PQ型・PCR型
・メーカホームページ:http://prod.kiw.co.jp/parking/relation/829.html
②会社名:セイワパーク株式会社
・商品名:一般認定駐車場
・メーカホームページ:https://www.seiwapark.co.jp/building/minister.php
型式適合認定を取得している企業の取り組み
企業側からしてみれば、型式適合認定は単なる商品開発だけでなく、その認定を取る為の労力を必要とする。企業は、この型式適合認定をどのように捉え、企業利益に結びつけようとしているのだろうか。取り組みを紹介する。
住宅メーカー大手である、ミサワホーム株式会社は「認定のすまい」と題してホームページで紹介をしている。(https://www.misawa.co.jp/kodate/technology/mokusitu/quality/nintei/)
購入者にとって、認定を取得しているから安全・安心を届ける事ができるというのがコンセプトであろう。
以下、ホームページからの抜粋である。
ミサワホームは、確かな実験方法でデータをとり、検証された住まいこそが、もっとも信頼できると考えます。このため、さまざまな耐力・耐震実験や研究、改良を積み重ね、数々の公的認定を取得してきました。まず1962年、独自の「木質パネル接着工法」が「建築基準法第38条」認定を取得。1987年には木質総3階建住宅の第38条認定を取得、2000年には、建築基準法の改正にともない、新たに「型式適合認定」と「型式部材等製造者認証」を取得しました。客観的基準で公的に品質と性能が認められた、信頼性の高い住まいづくりを実現しています。
ミサワホームは、検証されたものこそが、もっとも信頼できるものであるとしている。建築は、他の工業製品とは違い一点物という特性を持っている。これは、経験等に寄ることができない中で安全性等を法律等によってカバーしているものである。しかし、そこには本当にこの土地に対して、この場所に対して大丈夫なのかという懸念は残るものである。
住宅という小規模なものであるからこそ、ミサワホームの取り組みは実現ができるものかも知れないが、購入者に安心を提供する取り組みである事は間違いのないものであろう。
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まとめ
型式適合認定制度は平成10年に制度化されたもので、工業化によって開発されたものに対して、審査等を簡略する事で、設計者や審査員等の負担軽減や製品等の付加価値を持たせる意味が含まれているものと考えられる。
建築における、設計業務は自動車や機械等の設計に比べて、敷地の計上が千差万別であることからも、工業化を進める事はなかなか難しい。そのような中でも、出来うる事はやっていくというのがこの制度の目的であると考えられる。
工事現場においても、建築工事はほとんどが人的な作業であり、当然のことながらヒューマンエラーを起こすことも十分にありうる。
設計者や施主の立場であれば、この制度をよく理解し積極的に関っていくことが、上記に述べたような問題を解決につながっていくのかもしれない。
一級建築士
不動産コンサルティングマスター
一級建築士としての経験を活かした収益物件開発、不動産投資家向けのコンサルティング事業、及びWEBサイトを複数運営。建築・不動産業界に新たな価値を提供する活動を行う。