火災発生時に迅速な避難を実現するために欠かすことができない避難階・避難階段の整備。
避難経路の整備規定に関しては、平成30年度の「建築基準法の一部を改正する法律案」の閣議決定時に行われた「防火・避難関係規定の合理化」に含まれている。
避難経路の中において、避難階段は、屋内外や階数などの建築物の規模や用途によって基準が異なる。この記事では、建築基準法の改正を含めて避難階段の規定について再度確認することができる。
避難階段・避難階は避難施設の1つ
避難階段や避難階は、避難経路となる避難施設の1つである。避難施設とは、避難経路となる廊下・階段・出入り口の寸法・構造・配置などに様々な規定を設け、建築物の室内から安全に避難できるようにしたものである。避難施設としては、以下のような設備が例としてあげられる。
- 避難廊下
- 出入り口の扉や施錠装置
- 手すり
- 避難階段
- 敷地内通路
全ての建築物に避難規定が定められているわけではなく、避難規定が適用させる建築物には以下のような条件が定められている。
避難規定を受ける建築物の条件
避難規定は建築基準法で以下のように定められている。
建築基準法 第三十五条
別表第一(い)欄(一)項から(四)項までに掲げる用途に供する特殊建築物、階数が三以上である建築物、政令で定める窓その他の開口部を有しない居室を有する建築物又は延べ面積(同一敷地内に二以上の建築物がある場合においては、その延べ面積の合計)が千平方メートルをこえる建築物については、廊下、階段、出入口その他の避難施設、消火栓せん、スプリンクラー、貯水槽そうその他の消火設備、排煙設備、非常用の照明装置及び進入口並びに敷地内の避難上及び消火上必要な通路は、政令で定める技術的基準に従つて、避難上及び消火上支障がないようにしなければならない。
別表第一(い)欄(一)項から(四)項までに掲げる用途に供する特殊建築物とは以下の建築物を参考にしてほしい。
(一) | 劇場・映画館、演芸館、公会堂、集会場 |
(二) | 病院、診療所、ホテル、旅館、下宿、共同住宅、寄宿舎、児童福祉施設等 |
(三) | 学校、体育館、博物館、美術館、図書館、ボーリング場、スキー場等 |
(四) | 百貨店、マーケット、展示場、キャバレー、カフェ、ナイトクラブ、バー、ダンスホール、遊技場、公衆浴場、待合、飲食店、物品販売店等 |
建築基準法で定められている建築物の条件は以下の3つに1つでも当てはまるものである。
- 特殊建築物
- 階数が3以上
- 延べ面積1,000平米以上
- 採光上無窓居室を有する建築物(有効採光面積が床面積の1/20未満のもの)
延べ面積が1,000平米を超える建築物でも、開口物の無い耐火構造の床もしくは壁で仕切られている場合には、それぞれ独立した建物とみなすことができる。避難規定に当てはまるかどうかは、建築物の構造についても事前に確認しておく必要がある。
→無料プレゼント『知らないと恥を書く!建築関係者が絶対に知っておくべき法令大百科』PDF
避難階とは
避難階とは、地上への出入り口を持つ階のことである。屋内階段は必ず避難階に直通するように設置されている。一般的には、避難階は1階であることが多いが、場合によっては2階や地下であっても地上に通じていれば避難階とされることがある。
避難階については、以下のように定義されている。
建築基準法施行令13条
避難階(直接地上へ通ずる出入口のある階をいう。以下同じ。)以外の階にあつては居室から第百二十条又は第百二十一条の直通階段に、避難階にあつては階段又は居室から屋外への出口に通ずる出入口及び廊下その他の通路
避難階の歩行距離
避難階に非常用のエレベーターがある場合、屋外への出口までの歩行距離が定められている。
建築基準法施行令13条の三第5項
避難階においては、非常用エレベーターの昇降路の出入口(第三項に規定する構造の乗降ロビーを設けた場合には、その出入口)から屋外への出口(道又は道に通ずる幅員四メートル以上の通路、空地その他これらに類するものに接している部分に限る。)の一に至る歩行距離は、三十メートル以下としなければならない。
乗降ロビーがない場合、昇降路の出入り口から屋外への出口の1つまでを30メートル以下とする必要がある。一方で乗降ロビーがある場合には、乗降ロビーの出入り口から屋外への出口の1つまでを30メートル以下としなければならない。
また、屋外への出口は以下の3つに限られる。
- 道路
- 4メートル以上の道に通じる通路
- 空き地
避難階には多くの規定が存在するが、避難階に通じる避難階段にも複数の規定が存在している。ここからは避難階段の規定について詳細に解説していく。
避難階段(直通階段)とは
避難階段は、屋内にある場合は避難階、屋外の場合は地上に直結させなければいけない。避難階段は避難時に支障がないように、以下の3点の規定が定められている。
- 避難階以外の階の居室から階段までの歩行距離の限度
- 避難階段の数
- 避難階段の分類とその構造
ここからは避難階段の設置条件・構造条件について解説していく。居室の種類や建築物の種類に応じて避難階段の規定は変わるため、十分確認しておこう。
避難階段の設置条件とは
避難階段の設置には、階の用途や居室の種類に応じて条件が変わる。避難階段までの歩行距離、避難階段が必要な建築物について解説していく。
3.1.1:避難階段までの歩行距離規制
避難階段までの歩行距離とは、その階の最も遠い居室から、直通階段に至るまでの通常の歩行経路の距離を示す。
また、居室の種類や構造の構造などに応じて、歩行距離の規定は異なる。以下の表は建築基準法施行令120条を基に作成した。
居室の種類 | 歩行距離 | ||||
主要構造部が準耐火構造または不燃材料の場合 | その他の場合 | ||||
内装不燃化しないもの | 内装不燃化 | ||||
14階以下 | 15階以上 | 14階以下 | 15階以上 | ||
無窓居室
(有効採光面積が床面積の1/20未満のもの) |
30m以下 | 20m以下 | 40m以下 | 30m以下 | 30m以下 |
百貨店・マーケット・展示場・キャバレー・カフェ・ナイトクラブ・バー・物品販売店など | |||||
病院・診療所・ホテル・旅館・下宿・寄宿舎・児童福祉施設など | 50m以下 | 40m以下 | 60m以下 | 50m以下 | |
その他の居室 | 40m以下 |
1つのみの避難階段が必要な建築物とは
避難階段を一つのみにすることができるのは以下の条件を満たした場合である。
階の用途
(居室の種類) |
対象となる階 | 条件 | |
(3) | キャバレー・カフェ・ナイトクラブ・バー・個室付浴場を営む施設・ヌードスタジオ等 | 5階以下
客室・客席などを有する階 |
居室の床面積が100平米以下
下記のいずれかが設けられている
|
居室の床面積が100平米以下
避難階の直上階または直下階の階の居室 |
|||
(6) | 建築基準法第35条の(一)~(四)以外の階 | 6階以上の階 | その階の居室の床面積100平米以下
下記のいずれかが設けられている
|
2つ以上の避難階段が必要な建築物とは
特殊建築物や規模の大きな建築物は、避難階段を確実に確保する必要がある。そのため以下のような居室のある階には、避難階段を2つ用意する必要がある。
居室の種類 | 対象となる階 | 主要構造部が準耐火構造または不燃材料の場合 | その他の場合 | ||
(1) | 職場・映画館・演芸館・観覧場・公会堂・集会場など | 客席・集会室などを有する場合 | 面積に関係なく適用される | ||
(2) | 物品販売業を営む店舗(床面積が1,500平米を超えるもの) | 売り場を有する場合 | 面積に関係なく適用される | ||
(3) | キャバレー・ナイトクラブ・カフェ・バー・個室付浴場を営む施設・ヌードスタジオなど | 客席・客室を有する場合 | 面積に関係なく適用される | ||
(4) | 病院・診療所(病室の床面積のみ) | 100平米超 | 50平米超 | ||
児童福祉施設など(主な用途に供する部分の床面積の合計) | |||||
(5) | ホテル・旅館・下宿(宿泊室の床面積の合計) | 200平米超 | 100平米超 | ||
共同住宅(居室の床面積の合計) | |||||
寄宿舎(寝室の床面積の合計) | |||||
(6) | その他の階 | 6階以上の階 | 居室を有する場合 | ||
5階以下の階 | 避難階の直上階
(居室の床面積) |
400平米超 | 200平米超 | ||
その他の階
(居室の床面積) |
200平米超 | 100平米超 |
居室の用途や構造・面積に応じて、避難階段の数は変わる。特に不特定多数の人が集まる施設では、面積を問わず火災リスクが高いため、避難階段の規制は厳しくなる。
避難階段の設置条件は建築基準法施行令121条に以下のように規定されている。
第百二十一条
建築物の避難階以外の階が次の各号のいずれかに該当する場合においては、その階から避難階又は地上に通ずる二以上の直通階段を設けなければならない。
一 劇場、映画館、演芸場、観覧場、公会堂又は集会場の用途に供する階でその階に客席、集会室その他これらに類するものを有するもの
二 物品販売業を営む店舗(床面積の合計が千五百平方メートルを超えるものに限る。第百二十二条第二項、第百二十四条第一項及び第百二十五条第三項において同じ。)の用途に供する階でその階に売場を有するもの
三 次に掲げる用途に供する階でその階に客席、客室その他これらに類するものを有するもの(五階以下の階で、その階の居室の床面積の合計が百平方メートルを超えず、かつ、その階に避難上有効なバルコニー、屋外通路その他これらに類するもの及びその階から避難階又は地上に通ずる直通階段で第百二十三条第二項又は第三項の規定に適合するものが設けられているもの並びに避難階の直上階又は直下階である五階以下の階でその階の居室の床面積の合計が百平方メートルを超えないものを除く。)
イ キャバレー、カフェー、ナイトクラブ又はバー
ロ 個室付浴場業その他客の性的好奇心に応じてその客に接触する役務を提供する営業を営む施設
ハ ヌードスタジオその他これに類する興行場(劇場、映画館又は演芸場に該当するものを除く。)
ニ 専ら異性を同伴する客の休憩の用に供する施設
ホ 店舗型電話異性紹介営業その他これに類する営業を営む店舗
四 病院若しくは診療所の用途に供する階でその階における病室の床面積の合計又は児童福祉施設等の用途に供する階でその階における児童福祉施設等の主たる用途に供する居室の床面積の合計が、それぞれ五十平方メートルを超えるもの
五 ホテル、旅館若しくは下宿の用途に供する階でその階における宿泊室の床面積の合計、共同住宅の用途に供する階でその階における居室の床面積の合計又は寄宿舎の用途に供する階でその階における寝室の床面積の合計が、それぞれ百平方メートルを超えるもの
六 前各号に掲げる階以外の階で次のイ又はロに該当するもの
イ 六階以上の階でその階に居室を有するもの(第一号から第四号までに掲げる用途に供する階以外の階で、その階の居室の床面積の合計が百平方メートルを超えず、かつ、その階に避難上有効なバルコニー、屋外通路その他これらに類するもの及びその階から避難階又は地上に通ずる直通階段で第百二十三条第二項又は第三項の規定に適合するものが設けられているものを除く。)
ロ 五階以下の階でその階における居室の床面積の合計が避難階の直上階にあつては二百平方メートルを、その他の階にあつては百平方メートルを超えるもの
2 主要構造部が準耐火構造であるか、又は不燃材料で造られている建築物について前項の規定を適用する場合には、同項中「五十平方メートル」とあるのは「百平方メートル」と、「百平方メートル」とあるのは「二百平方メートル」と、「二百平方メートル」とあるのは「四百平方メートル」とする。
3 第一項の規定により避難階又は地上に通ずる二以上の直通階段を設ける場合において、居室の各部分から各直通階段に至る通常の歩行経路のすべてに共通の重複区間があるときにおける当該重複区間の長さは、前条に規定する歩行距離の数値の二分の一をこえてはならない。ただし、居室の各部分から、当該重複区間を経由しないで、避難上有効なバルコニー、屋外通路その他これらに類するものに避難することができる場合は、この限りでない。
4 第一項(第四号及び第五号(第二項の規定が適用される場合にあつては、第四号)に係る部分に限る。)の規定は、階数が三以下で延べ面積が二百平方メートル未満の建築物の避難階以外の階(以下この項において「特定階」という。)(階段の部分(当該部分からのみ人が出入りすることのできる便所、公衆電話所その他これらに類するものを含む。)と当該階段の部分以外の部分(直接外気に開放されている廊下、バルコニーその他これらに類する部分を除く。)とが間仕切壁若しくは次の各号に掲げる場合の区分に応じ当該各号に定める防火設備で第百十二条第十九項第二号に規定する構造であるもので区画されている建築物又は同条第十五項の国土交通大臣が定める建築物の特定階に限る。)については、適用しない。
一 特定階を第一項第四号に規定する用途(児童福祉施設等については入所する者の寝室があるものに限る。)に供する場合 法第二条第九号の二ロに規定する防火設備(当該特定階がある建築物の居室、倉庫その他これらに類する部分にスプリンクラー設備その他これに類するものを設けた場合にあつては、十分間防火設備)
二 特定階を児童福祉施設等(入所する者の寝室があるものを除く。)の用途又は第一項第五号に規定する用途に供する場合 戸(ふすま、障子その他これらに類するものを除く。)
(屋外階段の構造)
特別避難階段の設置条件
避難階段は、建築物の規模や用途に応じて2種類に分類される。特別避難階段は、より大規模な建築物に適用される。特別避難階段を設置する条件は以下の表にまとめられる。
用途 | 避難階段 | 特別避難階段 | |
地上階 | 物品販売店舗
(床面積1,500平米超) |
3階以上の階に通ずる直通階段 |
|
その他 | 5階以上の階に通ずる直通階段 | 15階以上の階に通ずる直通階段 | |
地階 | 全ての用途 | 地下2階以下に通ずる直通階段 | 地下3階以下の階に通ずる直通階段 |
1972年、1973年にデパートでの火災事故が発生し、大惨事に見舞われた。そのため、デパートなどに見られる物品販売店舗という使用用途では、条件は厳しくなっている。また、地上階で物品販売店舗の居室以外の用途で使われている場合、下記の条件に当てはまる際には、避難階段・特別避難階段としなくてもよい。
- 主要構造部が耐火構造かつ
- 床面積の合計が100平米以内(共同住宅の住戸は200平米以内)ごとに、耐火構造の床・壁または、特定防火設備で防火区画されている
建築基準法施行令第百二十二条
建築物の五階以上の階(その主要構造部が準耐火構造であるか、又は不燃材料で造られている建築物で五階以上の階の床面積の合計が百平方メートル以下である場合を除く。)又は地下二階以下の階(その主要構造部が準耐火構造であるか、又は不燃材料で造られている建築物で地下二階以下の階の床面積の合計が百平方メートル以下である場合を除く。)に通ずる直通階段は次条の規定による避難階段又は特別避難階段とし、建築物の十五階以上の階又は地下三階以下の階に通ずる直通階段は同条第三項の規定による特別避難階段としなければならない。ただし、主要構造部が耐火構造である建築物(階段室の部分、昇降機の昇降路の部分(当該昇降機の乗降のための乗降ロビーの部分を含む。)及び廊下その他の避難の用に供する部分で耐火構造の床若しくは壁又は特定防火設備で区画されたものを除く。)で床面積の合計百平方メートル(共同住宅の住戸にあつては、二百平方メートル)以内ごとに耐火構造の床若しくは壁又は特定防火設備(直接外気に開放されている階段室に面する換気のための窓で開口面積が〇・二平方メートル以下のものに設けられる法第二条第九号の二ロに規定する防火設備を含む。)で区画されている場合においては、この限りでない。
2 三階以上の階を物品販売業を営む店舗の用途に供する建築物にあつては、各階の売場及び屋上広場に通ずる二以上の直通階段を設け、これを次条の規定による避難階段又は特別避難階段としなければならない。
3 前項の直通階段で、五階以上の売場に通ずるものはその一以上を、十五階以上の売場に通ずるものはそのすべてを次条第三項の規定による特別避難階段としなければならない。
(避難階段及び特別避難階段の構造)
→無料プレゼント『知らないと恥を書く!建築関係者が絶対に知っておくべき法令大百科』PDF
避難階段の構造条件
特別避難階段と避難階段では、構造の条件は大きく異なる。より確実で安全な避難活動を実現するためには、階段の構造条件を把握しておくことが重要である。
ここからは、特別避難階段・避難階段それぞれの構造条件について簡単に解説する。
屋内の避難階段の構造条件
屋内の避難階段は、屋外に比べて壁や内装などの安全性が求められる。構造基準は屋内の避難階段の構造基準は、以下の表にまとめられる。
設備 | 構造基準 |
階段 | 耐火構造とし、避難階まで直通する |
壁 | 耐火構造とする |
内装(壁・下窓) | 仕上げ、下地とも不燃材料を使用する |
照明設備など | 窓その他の採光上有効な開口部、または予備電源付きの照明設備を設ける |
屋外に面する開口部(※) | 階段室の開口部と階段室以外の開口部との距離を90センチ以上離す |
窓(屋内に面するもの) | 面積が1平米以内の防火戸などの防火設備で、はめ殺し戸とする |
出入り口の戸 | 防火戸(遮炎性能20分間)などの防火設備とする
直接手で開けられる 常時閉鎖式または、煙感知器などで自動的に閉鎖するもの |
戸の開閉方向 | 避難方向とする |
※以下の条件の場合には、90センチの規定は適用されない
- 開口部の面積が1平米以内の防火戸などの防火設備ではめ殺し戸の場合
- 壁、屋根が耐火構造の場合
屋内に設ける避難階段の構造基準は、建築基準法施行令第百二十三条で以下のようにまとめられている。
建築基準法施行令第百二十三条
屋内に設ける避難階段は、次に定める構造としなければならない。
一 階段室は、第四号の開口部、第五号の窓又は第六号の出入口の部分を除き、耐火構造の壁で囲むこと。
二 階段室の天井(天井のない場合にあつては、屋根。第三項第四号において同じ。)及び壁の室内に面する部分は、仕上げを不燃材料でし、かつ、その下地を不燃材料で造ること。
三 階段室には、窓その他の採光上有効な開口部又は予備電源を有する照明設備を設けること。
四 階段室の屋外に面する壁に設ける開口部(開口面積が各々一平方メートル以内で、法第二条第九号の二ロに規定する防火設備ではめごろし戸であるものが設けられたものを除く。)は、階段室以外の当該建築物の部分に設けた開口部並びに階段室以外の当該建築物の壁及び屋根(耐火構造の壁及び屋根を除く。)から九十センチメートル以上の距離に設けること。ただし、第百十二条第十六項ただし書に規定する場合は、この限りでない。
五 階段室の屋内に面する壁に窓を設ける場合においては、その面積は、各々一平方メートル以内とし、かつ、法第二条第九号の二ロに規定する防火設備ではめごろし戸であるものを設けること。
六 階段に通ずる出入口には、法第二条第九号の二ロに規定する防火設備で第百十二条第十九項第二号に規定する構造であるものを設けること。この場合において、直接手で開くことができ、かつ、自動的に閉鎖する戸又は戸の部分は、避難の方向に開くことができるものとすること。
七 階段は、耐火構造とし、避難階まで直通すること。
3 特別避難階段は、次に定める構造としなければならない。
一 屋内と階段室とは、バルコニー又は付室を通じて連絡すること。
二 屋内と階段室とが付室を通じて連絡する場合においては、階段室又は付室の構造が、通常の火災時に生ずる煙が付室を通じて階段室に流入することを有効に防止できるものとして、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたものであること。
三 階段室、バルコニー及び付室は、第六号の開口部、第八号の窓又は第十号の出入口の部分(第百二十九条の十三の三第三項に規定する非常用エレベーターの乗降ロビーの用に供するバルコニー又は付室にあつては、当該エレベーターの昇降路の出入口の部分を含む。)を除き、耐火構造の壁で囲むこと。
四 階段室及び付室の天井及び壁の室内に面する部分は、仕上げを不燃材料でし、かつ、その下地を不燃材料で造ること。
五 階段室には、付室に面する窓その他の採光上有効な開口部又は予備電源を有する照明設備を設けること。
六 階段室、バルコニー又は付室の屋外に面する壁に設ける開口部(開口面積が各々一平方メートル以内で、法第二条第九号の二ロに規定する防火設備ではめごろし戸であるものが設けられたものを除く。)は、階段室、バルコニー又は付室以外の当該建築物の部分に設けた開口部並びに階段室、バルコニー又は付室以外の当該建築物の部分の壁及び屋根(耐火構造の壁及び屋根を除く。)から九十センチメートル以上の距離にある部分で、延焼のおそれのある部分以外の部分に設けること。ただし、第百十二条第十六項ただし書に規定する場合は、この限りでない。
七 階段室には、バルコニー及び付室に面する部分以外に屋内に面して開口部を設けないこと。
八 階段室のバルコニー又は付室に面する部分に窓を設ける場合においては、はめごろし戸を設けること。
九 バルコニー及び付室には、階段室以外の屋内に面する壁に出入口以外の開口部を設けないこと。
十 屋内からバルコニー又は付室に通ずる出入口には第一項第六号の特定防火設備を、バルコニー又は付室から階段室に通ずる出入口には同号の防火設備を設けること。
十一 階段は、耐火構造とし、避難階まで直通すること。
十二 建築物の十五階以上の階又は地下三階以下の階に通ずる特別避難階段の十五階以上の各階又は地下三階以下の各階における階段室及びこれと屋内とを連絡するバルコニー又は付室の床面積(バルコニーで床面積がないものにあつては、床部分の面積)の合計は、当該階に設ける各居室の床面積に、法別表第一(い)欄(一)項又は(四)項に掲げる用途に供する居室にあつては百分の八、その他の居室にあつては百分の三を乗じたものの合計以上とすること。
(共同住宅の住戸の床面積の算定等)
屋外の避難階段の構造条件
屋外の避難階段は、煙や救助活動の面では非常に有効である。しかし、中高層階の場合には、高さからの心理的な不安を感じることがある。また、積雪や凍結などの外部環境の影響を受ける可能性もある。避難時には、冷静さを失っている可能性があるため、屋外の避難階段ではより、安全な避難を実現できるような構造・設計にする必要がある。
構造基準は屋内の避難階段の構造基準は、以下の表にまとめられる。
設備 | 構造条件 |
階段 | 耐火構造とし、避難階まで直通する |
出入り口の戸 | 防火戸(遮煙性能20分間)などの防火設備とする |
戸の開閉方向 | 避難方向とする |
屋外に面した開口部 | 開口部は階段から2メートル以上離す |
屋外に面した開口部が2メートル以上離す必要があるのは、窓から火が噴き出る恐れがあり、非常に危険なためである。
屋外の避難階段の構造基準は、建築基準法施行令第百二十三条第二項で以下のようにまとめられている。
建築基準法施行令第百二十三条
2 屋外に設ける避難階段は、次に定める構造としなければならない。
一 階段は、その階段に通ずる出入口以外の開口部(開口面積が各々一平方メートル以内で、法第二条第九号の二ロに規定する防火設備ではめごろし戸であるものが設けられたものを除く。)から二メートル以上の距離に設けること。
二 屋内から階段に通ずる出入口には、前項第六号の防火設備を設けること。
三 階段は、耐火構造とし、地上まで直通すること。
特別避難階段の構造条件
特別避難階段とは、屋内階段に入る前に、下記のいずれかを設けたものである。
①付室(排煙設備または外気に向かって開くことのできる窓を設けたもの)②バルコニー
避難階段とは異なり、特別避難階段の階段室は屋外に設けてはならないとされている。ここからは特別避難階段の構造条件についてまとめていく。また、付室型・バルコニー型のどちらであっても構造条件は同じである。
設備 | 構造条件 | |
壁 | 耐火構造とする | |
内装(壁・天井) | 仕上げ、下地とも不燃材料で作る | |
出入り口 | 階段に通ずる出入り口 | 防火設備(遮炎性能20分) |
屋内から附室に通ずる出入り口 | 特定防火設備(遮炎性能1時間) | |
照明設備 | 窓その他の採光上有効な開口部、または予備電源付きの照明設備を設ける | |
屋外に面する開口部 | 階段室の開口部と階段室以外の開口部との距離を90センチ以上離す | |
階段 | 耐火構造とし、避難階まで直通する | |
階段室の窓 | はめ殺し戸に限る | |
付室 |
|
付室型の特別避難階段の構造条件は建築基準法施行令第百二十三条第三項に以下のようにまとめられている。
建築基準法施行令第百二十三条第三項
3 特別避難階段は、次に定める構造としなければならない。
一 屋内と階段室とは、バルコニー又は付室を通じて連絡すること。
二 屋内と階段室とが付室を通じて連絡する場合においては、階段室又は付室の構造が、通常の火災時に生ずる煙が付室を通じて階段室に流入することを有効に防止できるものとして、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたものであること。
三 階段室、バルコニー及び付室は、第六号の開口部、第八号の窓又は第十号の出入口の部分(第百二十九条の十三の三第三項に規定する非常用エレベーターの乗降ロビーの用に供するバルコニー又は付室にあつては、当該エレベーターの昇降路の出入口の部分を含む。)を除き、耐火構造の壁で囲むこと。
四 階段室及び付室の天井及び壁の室内に面する部分は、仕上げを不燃材料でし、かつ、その下地を不燃材料で造ること。
五 階段室には、付室に面する窓その他の採光上有効な開口部又は予備電源を有する照明設備を設けること。
六 階段室、バルコニー又は付室の屋外に面する壁に設ける開口部(開口面積が各々一平方メートル以内で、法第二条第九号の二ロに規定する防火設備ではめごろし戸であるものが設けられたものを除く。)は、階段室、バルコニー又は付室以外の当該建築物の部分に設けた開口部並びに階段室、バルコニー又は付室以外の当該建築物の部分の壁及び屋根(耐火構造の壁及び屋根を除く。)から九十センチメートル以上の距離にある部分で、延焼のおそれのある部分以外の部分に設けること。ただし、第百十二条第十六項ただし書に規定する場合は、この限りでない。
七 階段室には、バルコニー及び付室に面する部分以外に屋内に面して開口部を設けないこと。
八 階段室のバルコニー又は付室に面する部分に窓を設ける場合においては、はめごろし戸を設けること。
九 バルコニー及び付室には、階段室以外の屋内に面する壁に出入口以外の開口部を設けないこと。
十 屋内からバルコニー又は付室に通ずる出入口には第一項第六号の特定防火設備を、バルコニー又は付室から階段室に通ずる出入口には同号の防火設備を設けること。
十一 階段は、耐火構造とし、避難階まで直通すること。
十二 建築物の十五階以上の階又は地下三階以下の階に通ずる特別避難階段の十五階以上の各階又は地下三階以下の各階における階段室及びこれと屋内とを連絡するバルコニー又は付室の床面積(バルコニーで床面積がないものにあつては、床部分の面積)の合計は、当該階に設ける各居室の床面積に、法別表第一(い)欄(一)項又は(四)項に掲げる用途に供する居室にあつては百分の八、その他の居室にあつては百分の三を乗じたものの合計以上とすること。
→無料プレゼント『知らないと恥を書く!建築関係者が絶対に知っておくべき法令大百科』PDF
避難階・階段は細かな基準の違いを抑えるのがポイント
今回は、避難階・避難階段を中心に避難施設について基本的な解説から、構造条件などの応用的な部分まで解説した。避難階・避難階段は、避難や消防の観点から重要視されているため、居室の使用用途に応じて細かく条件が異なる。
避難階段や避難階の条件は、過去のデパートでの大規模建築物における大規模火災や震災時の避難が安全かつ実現可能ではなかった歴史から作られている。
だが、建築基準法は年々複雑化を増しており、細かな改正も進んでいる。
是非、建築のプロであるこの記事の読者において、適切な判断やアドバイスを建築主にしていただき、安全な建物運営に貢献できる立場であっていただきたいものである。この記事がそのような一助になればと思う。
→無料プレゼント『知らないと恥を書く!建築関係者が絶対に知っておくべき法令大百科』PDF
一級建築士
不動産コンサルティングマスター
一級建築士としての経験を活かした収益物件開発、不動産投資家向けのコンサルティング事業、及びWEBサイトを複数運営。建築・不動産業界に新たな価値を提供する活動を行う。