建築物において火災が生じた場合に消火活動をする為に建築基準法や消防法において様々な規定が定められている。
建築基準法においては、消防が建物内に入り消火活動を進める為に非常用進入口について、定められている。
今回は、非常用進入口の設置基準については様々な部分で解説が加えられていると思うので、非常用進入口における赤色灯に焦点をあてて解説をしていきたい。
建物のファサードなどを気にする場合などは、赤色灯が邪魔になるという考えも存在するかもしれない、ここではよく理解して適切に設置できるように解説していきたい。
非常用進入口について
まず非常用進入口についての解説をする。根拠となる条文は、以下の通りである。
建築基準法施行令 第126条の6
建築物の高さ三十一メートル以下の部分にある三階以上の階(不燃性の物品の保管その他これと同等以上に火災の発生のおそれの少ない用途に供する階又は国土交通大臣が定める特別の理由により屋外からの進入を防止する必要がある階で、その直上階又は直下階から進入することができるものを除く。)には、非常用の進入口を設けなければならない。ただし、次の各号のいずれかに該当する場合においては、この限りでない。
一 第百二十九条の十三の三の規定に適合するエレベーターを設置している場合
二 道又は道に通ずる幅員四メートル以上の通路その他の空地に面する各階の外壁面に窓その他の開口部(直径一メートル以上の円が内接することができるもの又はその幅及び高さが、それぞれ、七十五センチメートル以上及び一・二メートル以上のもので、格子その他の屋外からの進入を妨げる構造を有しないものに限る。)を当該壁面の長さ十メートル以内ごとに設けている場合
非常用進入口は、火災時に消防隊が建物内に進入する場合に持ちいられるものである。階数が3を超える場合に必要とされ、道路や敷地内に空地を有する面に設置される。
非常用進入口は、非常時に消防が入り安くするために、バルコニーの設置や表示マーク、赤色灯の設置が決められている。
また、非常用進入口に変わるものとして代替進入口というものがあり、これは非常用進入口に比べて設置間隔が短くなっている。
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非常用進入口と代替進入口の位置と構造
続いて、設置における位置と構造について解説していく。
非常用進入口
道路または道路に通ずる幅4m以上の通路や空地に面する各階の外壁面に、40m以内の間隔 (外壁端部からは20m以内)で設ける。屋外から開放できるも の、または破壊して室内に進入できるものとし なければならない。
屋外から解放できるものとは、常時施錠されていない状況などが考えられる。破壊して室内に進入できるものとは、ガラスなどをさすが、消防が破壊できるものの認識は建築主事の見解によるが、概ね消防無窓階で示されているガラス判定が準ずるものとして差し障りないであろう。
また、非常用進入口の場合、バルコニーを設置し、奥行き1M以上、幅4M以上とする必要がある。また、原則として赤色の進入路を示す▽シールと窓の上に赤色灯を設置することが義務付けられている。
代替進入口
道路又は道路に通ずる幅4m以上の通路や空地 に面する各階の外壁面に、10m以内ごとに設ける。
直径1m以上の円が内接できる大きさ、または幅75cm以上、高さ1.2m以上の大き さの窓とし、格子その他の屋外からの進入を妨 げる構造を有しないものとする。屋外から開放できるも の、または破壊して室内に進入できるものとし なければならない。
屋外から解放できるものとは、常時施錠されていない状況などが考えられる。破壊して室内に進入できるものとは、ガラスなどをさすが、消防が破壊できるものの認識は建築主事の見解によるが、概ね消防無窓階で示されているガラス判定が準ずるものとして差し障りないであろうっかり。
また、非常用進入口とは違い、バルコニーの設置や赤色灯の設置は要求されない。
これは、バルコニーと赤色灯の設置が消防隊の確実な進入ができる条件を揃えられと解釈できることにつながるから、設置間隔も長くてよいとしているのだと解される。
ここまで解説をしてきたらお解りであろうが、赤色灯を必要とするのは非常用進入口のみである。
赤色灯の技術基準
非常用進入口部分には赤色灯の設置が必要である。よって設置間隔等については、非常用進入口の設置条件と同じであり、非常用進入口が必要な部分に設置が必要であると解すればよい。
そして、赤色灯の法的基準は下記の通り、建設省告示1831号において定められている。
<建設省告示1831号>
建築基準法施行令第百二十六条の七第七号の規定に基づく非常用の進入口の機能を確保するために必要な構造の基準
建築基準法施行令(昭和二十五年政令第三百三十八号)第百二十六条の七第七号の規定に基づき、非常用の進入口の機能を確保するために必要な構造の基準を次のとおり定める。
第一 非常用の進入口又はその近くに掲示する赤色灯は、次の各号に適合しなければならない。
一 常時点灯している構造(フリッカー状態含む)とし、かつ、一般の者が容易に電源を遮断することができる開閉器を設けないこと。
二 自動充電装置又は時限充電装置を有する蓄電池(充電を行なうことなく三十分間継続して点灯させることができる容量以上のものに限る。)その他これに類するものを用い、かつ、常用の電源が断たれた場合に自動的に切り替えられて接続される予備電源を設けること。
三 赤色灯の明るさ及び取り付け位置は、非常用の進入口の前面の道又は通路その他の空地の幅員の中心から点灯していることが夜間において明らかに識別できるものとすること。
四 赤色灯の大きさは、直径十センチメートル以上の半球が内接する大きさとすること。
第二 非常用の進入口である旨の表示は、赤色反射塗料による一辺が二十センチメートルの正三角形によらなければならない。
以下に要点をまとめる
○常時点灯構造であること。フリッカー状態でも可。
昼夜を問わず、点灯することが求められる。中には、非常用進入口が雨の日に暗くなっていることも考えられる。また、隣の建物などにより日影部分などにあることも考えられる。常に、ここにあることを知らせなくてはいけない為、常時点灯である。
○赤色灯の電源遮断を容易にできる構造とはしないこと
容易に遮断できるような位置に、開閉器(電源スイッチ)などがあれば機能を果たせなくなり、目的を達成できない。
○蓄電池機能をもつこと又は予備電源機能をもつこと
非常時においては、一般電源が遮断される恐れがある。一般電源が遮断された場合においても、赤色灯の点灯を担保する必要があるため、蓄電池機能か予備電源機能を持たせることとなっている
○非常用進入口が面する道路もしくは空地から、赤色灯を識別できること
消防隊は現地に駆け付けた時に、建物への進入経路を確認する。地上部分に消防隊はいるのでそこから識別できるものではないと意味がない。
○赤色灯の大きさは、直径10cm以上
なぜ直径10cm以上であるのか定かではないが、識別をしやすい大きさとして定義されたと考えられる。
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赤色灯の取り扱いメーカ
赤色灯は、ほぼ照明メーカの各社が取り扱っているといって間違いないだろうが、ここではそのメーカと商品概要を紹介する。
まず、告示の規定に基づき、各社メーカが取り扱うシリーズは大きく2つにわかれている。「電池内蔵型」「予備電源別置型」である。
電池内蔵型
パナソニック
NNF20291等
- 電池内蔵の場合
非常時:豆球2灯点灯 2.5V 0.5A
常 時:LED(赤色)1個点灯 2.2W(AC100V)
- グローブ : ガラス ( 内面赤色塗装 )
- 電源部分に電池内蔵
- 光束維持率70%推定40000時間(LEDのみ)
- 重量: 1.3kg(灯具)・0.7kg(電源ブロック)
備考
- 交換電池: FK191
常時は、施設側の電源を利用し点灯を保つが、非常時において電源が遮断された場合に内蔵電池により、点灯する仕組みである。また、電球はLEDが主流になっている。また、非常用進入口の設置場所を鑑みてみると防雨型になっている。
三菱エレクトリック
LC-A2-01等
- 本体 アルミ・ホワイトブロンズ色仕上
- グローブ ガラス・赤色仕上
- 質量 1.2kg
- 電池 2N12FA
- 鋼板厚さ 0.8(本体)
- 使用ランプ 5Wナツメ球 2.5V 0.5A豆球×2(非常時点灯)
平常時はナツメ球、非常時は豆球を点灯。
平常時は一般電源、非常時は内蔵電池により点灯する非常用進入口赤色灯である。
密閉形ニッケルカドミウム蓄電池内蔵、点検用スイッチ・ナツメ球(100V)・豆球(2.5V 0.5A定格)2個付。
東芝ライテック
IEM-2257N等
- LED電球×1灯
- 非常時 豆球(2.5V0.5A)2灯点灯
- 仕様:
- 枠:メタリックシルバー
- グローブ:ガラス赤色
- 質量:1.9kg
- 電池形名:2NR-SC-SM(ニカド電池使用)
- 壁面直付、天井直付兼用
予備電源別置型
常時は、施設側の電源を利用し点灯を保つが、非常時において電源が遮断された場合に別置された電源により、点灯する仕組みである。また、電球はLEDが主流になっている。また、非常用進入口の設置場所を鑑みてみると防雨型になっている。
パナソニック
NNF2093等
仕様
- 電源別置の場合
非常時:LED(赤色)1個点灯 (AC/DC100V)
常 時:LED(赤色)1個点灯 2.2W(AC100V)
- グローブ : ガラス ( 内面赤色塗装 )
- 光束維持率70%推定40000時間(LEDのみ)
- 重 1.3 kg
大きく分かれて、「電池内蔵型」「予備電源別置型」にわかれることが理解していただき、主流なメーカーが商品を取り扱っていることが理解いただけたかと思う。
どちらの、タイプを選ぶのかは施主、設計者が決めていけばよいことであるが、施設の運営方法や思想に照らし合わせて考えていきたい。非常時に使うものであるので、点灯しないことは許されるものではない。
その状況を引き起こさないために、建築基準法上の点検や消防設備点検があり、平常に動くことを担保するわけではあるが、常時施設内に建物の設備等を監視している人等がいれば、どちらのタイプを選んだとしても問題はないであろう。
ただ、管理人不在の施設などであり、建物設備が稀にしか点検をされないような運用をするのであれば、どちらのタイプをとるかは慎重に考えた方がよいであろう。
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最後に
いかがであっただろうか、赤色灯というものに着目することで、非常用進入口に対する、理解が深まったのではないだろうか。非常用進入口と赤色灯はセットであると覚えてしまって差し障りないであろう。
ただ意匠を考えた際に、どうしても赤色灯は設けたくないという考えもあるかもしれない。また、バルコニーを専用で作ることが難しい環境も考えられる。そのような時は、代替進入口の存在を思い出してもらいたい。
代替進入口であれば、赤色灯もいらないし、バルコニーも必要はない。ただ、設置感覚が狭くなるので注意が必要である。
赤色灯自体は、消火活動上重要な位置を占めるものではある。代替進入口を選ぶか、非常用進入口を選ぶかは設計者の判断によるものであるが、建物用途、地域性などから総合的に判断をして、選択していきたいものである。
法に合致してるといえども、使い憎いものを作ってしまっては、設計としては失敗である。建築計画をしていく際には、施主の希望はもちろんの事、設計者の思想、そして法的な合致が求められるものである。
設計をするものとしては、施主の希望や設計者の思想を求めるあまり、法的に不合理なものを計画をしないように注意したいものである。
法律は最低限の基準を定めているものであり、それより上位の計画は施主及び設計者の努力と言って差し障りないであろう。
法的な最低限レベルの要求部分は何であるのかを、建築主事や管轄消防等に確認しつかむ事が何よりも重要である。その上で、今回の計画において出来うる事は何であるのかを、判断していくのが設計者としての役割であろう。
そこには、施設のコンセプトや予算、工期など様々な要因が絡んでは来る。今回の「非常用進入口 赤色灯」について言えば、非常時についての施設としての役割を定義つけることになる。
この施設の重要な要となるものは何であるのか、よく考えて計画を進めたいものである。
一級建築士
不動産コンサルティングマスター
一級建築士としての経験を活かした収益物件開発、不動産投資家向けのコンサルティング事業、及びWEBサイトを複数運営。建築・不動産業界に新たな価値を提供する活動を行う。