避難器具は、消防法第17条の規定にもとづき、建築物への設置がもとめられている消防用設備のひとつである。
ここでは避難器具の設置基準や緩和規定などを解説する。
避難器具とは
消防法及び施行令には避難器具を定義している文章はない。しかし、規定されている避難器具から判断できることは、火災時において、階段など通常の避難経路を使用することができない場合に用いる、緊急時の二次的な器具という性格である。
したがって、階段等のみで避難が可能な建築物であれば避難器具の必要性は低いが、たとえば階段が少なかったり、利用者が多数であったり、また利用者の特性から迅速な避難が見込みにくい建築物については、避難器具の必要性は高まるといえるだろう。
また、当然ながら、避難器具は避難する利用者がみずから設置・操作するものであり、使用にあたっては簡単・確実が求められるものである。
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避難器具の種類
避難器具の種類については、消防法施行令第25条第2項の表において、8種類の避難器具(滑り棒、避難ロープ、避難はしご、避難用タラップ、滑り台、緩降機、避難橋、救助袋)をみることができる。
しかし、それぞれが具体的にどのような器具であるのかについては、自治省令および告示を参照する必要がある。
金属製避難はしごおよび緩降機についてはそれぞれ自治省令、その他の避難器具については、消防庁告示第1号「避難器具の基準」(昭和53年3月13日)にその規定がある。
以下、省令および告示を参照しながら、順に解説する。
滑り棒
滑り棒とは、告示の定義では「垂直に固定した棒を滑り降りるものをいう」とある。ドラマや映画などで、消防隊が出動時に滑り降りるあれと同じものである。
その上部と下部を取り付け具で固定できるようにする。降りるスピードが速いので、迅速に避難することができるが、危険をともなうので、2階からの避難のみに使うことができる。令別表1の(6)項に規定された、病院等の防火対象物には設置できない。
避難ロープ
告示では「上端部を固定しつりさげたロープを使用し降下するものをいう」とある。使用時の急激な降下を防止するため、ロープの一部に結び目などの滑り止めの加工が施されている。滑り棒と同様に、2階からの避難のみに使用でき、(6)項の病院等には設置できない。
避難はしご
避難はしごは避難のためのはしごであり、避難器具として基本的なものであり、避難器具の設置対象ほとんどのものに使用することができる。法規上は金属製のものと、それ以外のものに分類され、それぞれにおいて、使用方法により、固定はしご、立てかけはしご、吊り下げはしごの3種類に分類できる。
なお金属製のものに限り、吊り下げはしごのうち、ハッチ用つり下げはしごが規定されている。4階以上に設置する場合はバルコニーに設置し、金属製の固定または吊り下げはしごを使用しなければならない。令別表1の(6)項の病院等には設置できない。
金属製のものについては自治省令第3号「金属製避難はしごの技術上の規格を定める省令」(昭和四十年一月十二日)にその規格が規定されている。金属製以外のものについては上記の告示による。
避難用タラップ
告示では「階段状のもので、使用の際、手すりを用いるものをいう」とある。階段状であるから、踏板があり、使用するときに手すりを使うところが、はしごとは異なるものである。
告示では半固定の状態も想定しているので、可動式のもの、たとえば船舶の乗降に用いるタラップのようなものを想定するとわかりやすいだろう。3階、2階、地階に限ってのみ設置することができる。
なお、「階段状」とあるとおり、避難用タラップは階段ではない。したがって告示に規定される蹴上・踏面の基準は建築基準法とはことなり、蹴上は30cm以下、踏面は20cm以上と規定されている。もちろん建築基準法の主要構造部でもない。
滑り台
告示では「勾配のある直線状又はらせん状の固定された滑り面を滑り降りるものをいう」とある。防火対象物の窓やバルコニーなどと地上の間を鋼板製などの台で連絡し、これを避難する人が滑り降りることによって地上に避難するものをいう。
利用にあたって特別な操作が不要であり、短時間で多くの人が避難することができ、避難の確実性が高い。したがってすべての防火対象物に設置が可能である。
実際には幼稚園や保育園、病院や老人ホームなどの福祉施設など、利用者の特性から、階段での避難に困難が予想される防火対象物に設置されていることが多い。
緩降機
基準については、自治省令第2号「緩降機の技術上の規格を定める省令」(平成六年一月十七日)に規定されている。その定義によると、緩降機とは「使用者が他人の力を借りずに自重により自動的に連続交互に降下することができる機構を有するものをいう」とある。
使用者がベルトを身体に巻きつけ、自重により自動的に降下することができる器具で、降下速度を調整しながら一人ずつ降下するものをいう。井戸にある、水汲み用のつるべのようなものである。
滑車の部分に降下速度を調整する機構を有する。固定式と可搬式があり、法令上は10階であっても設置することができる。
避難橋
告示には「建築物相互を連絡する橋状のものをいう」としか規定されていないが、避難橋とは火災時に屋上や途中階から他の建築物へ避難するためのものをいう。
避難器具は防火対象物の各階から避難階や地上へ安全に避難するためのものであるが、避難橋に限り、隣の建築物へ一度避難してから、その階段等を利用して、避難階や地上へ避難する。このときの、隣の建築物については、その所有者や敷地の異同を問わない。
同一敷地内の隣接建築物であればともかく、所有者や敷地が異なる場合、その設置については様々な条件が整う必要がある。先の避難タラップと同様、避難橋は器具の一種であり、渡り廊下のような建築物の一部ではない。したがって、その構造・仕様については告示に規定されている。
救助袋
告示では「垂直又は斜めに展張し、袋本体の内部を滑り降りるものをいう」とある。救助袋とは、あらかじめ窓近くの床や壁に救助袋用の枠を固定しておき、避難時に窓から救助袋を降下・展張させて、布状の袋内部を滑り降りるものをいう。垂直式救助袋と、斜降式救助袋がある。
垂直式は袋内部がらせん状になっていたり、絞りがついているなど、降下速度が調整できる仕組みになっている。斜降式は滑り台状に斜めに展張させて利用する。それだけに設置スペースを確保する必要があり、また展張するための人員が必要である。
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避難器具の設置基準
では、避難器具をどのように設置するのか。次に避難器具の設置が必要な防火対象物、また設置すべき避難器具の種類、個数について解説する。
避難器具の設置が必要となる防火対象物
避難器具を設置する防火対象物については、消防法施行令第25条第1項に規定されている。まずは条文を下記に示す。
消防法施行令第25条第1項
避難器具は、次に掲げる防火対象物の階(避難階及び11階以上の階を除く。)に設置するものとする。
1 別表第1(6)項に掲げる防火対象物の2階以上の階又は地階で、収容人員が20人(下階に同表(1)項から(4)項まで、(9)項、(12)項イ、(13)項イ、(14)項又は(15)項に掲げる防火対象物が存するものにあつては、10人)以上のもの
2 別表第1(5)項に掲げる防火対象物の2階以上の階又は地階で、収容人員が30人(下階に同表(1)項から(4)項まで、(9)項、(12)項イ、(13)項イ、(14)項又は(15)項に掲げる防火対象物が存するものにあつては、10人)以上のもの
3 別表第1(1)項から(4)項まで及び(7)項から(11)項までに掲げる防火対象物の2階以上の階(主要構造部を耐火構造とした建築物の2階を除く。)又は地階で、収容人員が50人以上のもの
4 別表第1(12)項及び(15)項に掲げる防火対象物の3階以上の階又は地階で、収容人員が、3階以上の無窓階又は地階にあつては100人以上、その他の階にあつては150人以上のもの
5 前各号に掲げるもののほか、別表第1に掲げる防火対象物の3階(同表(2)項及び(3)項に掲げる防火対象物並びに同表(16)項イに掲げる防火対象物で2階に同表(2)項又は(3)項に掲げる防火対象物の用途に供される部分が存するものにあつては、2階)以上の階のうち、当該階(当該階に総務省令で定める避難上有効な開口部を有しない壁で区画されている部分が存する場合にあつては、その区画された部分)から避難階又は地上に直通する階段が2以上設けられていない階で、収容人員が10人以上のもの避難器具の設置の有無については、階を単位とし、その階の用途と収容人員により判定する。
また、避難階と、11階以上の階については避難器具の設置は不要である。また、地階であっても避難器具の設置基準の対象となることに注意したい。なお、収容人員の定義については施行令第1条の2第3項第1号イに、具体的な算定方法については施行規則第1条の3を参照してほしい。
上記で引用した条文では、第1号から第5号まで、階の用途ごとに設置基準を規定しているが、これを収容人員ごとに整理すると、以下の通りとなる。
① 収容人員10人以上
○ 一階段のみの防火対象物で3階以上の階、ただし(2)項キャバレー等、(3)項飲食店等は2階も対象(第5号)
○ (5)項ホテル等、(6)項病院等の地階・2階以上の階で下階に(1)~(4)項、(9)項、(12)項イ、(13)項イ、(14)項、(15)項がある階(第1号、第2号)
② 収容人員20人以上
○ (6)項病院・保育所等の地階・2階以上の階で、上記①以外のもの(第1号)
③ 収容人員30人以上
○ (5)項ホテル・共同住宅等の地階・2階以上の階で、上記①以外のもの(第2号)
④ 収容人員50人以上
○ (1)~(4)項、(7)~(11)項の地階・2階(耐火建築物の場合は3階)以上の階(第3号)
⑤ 収容人員100人以上
○ (12)項工場等、(15)項その他事務所等の地階・3階以上の無窓階(第4号)
⑥収容人員150人以上
○ (12)項工場等、(15)項その他事務所等の3階以上の有窓階(第4号)
設置すべき避難器具の種類と個数
避難器具であれば、どの避難器具をどの階に設置してもよいというわけではない。避難器具の種類の解説でも少しふれたように、避難器具の種類によっては設置することが認められていない階や用途がある。
また、収容人員に応じて、設置すべき避難器具の個数も定められている。それらの基準は令第25条第2項第1号に規定されている。
まず避難器具の種類については、表のかたちで規定されている。その表を避難器具ごとに整理しなおすと下記の通りとなる。
個数については条文で規定されている。先に収容人員ごとに整理した、①~⑥の分類に準じて整理すると、以下の通りとなる。
①~③ 収容人員100人以下は1個、以降100人を超えるごとに1個増(第1号、第2号、第5号)
④ 収容人員200人以下は1個、以降200人を超えるごとに1個増(第3号)
⑤~⑥ 収容人員300人以下は1個、以降300人を超えるごとに1個増(第4号)
設置基準については令第25条第2項第2号・第3号に、細目が消防法施行規則第27条に、それぞれ規定されている。
また、計画の上で重要なことが、避難階での避難経路である。敷地から出るまでが避難であるから、避難階まで降りてきたものの、そこから道路までの経路が確保できなければ避難の役には立たない。
その際に注意すべき点は経路において確保すべき幅員であるが、これについては消防庁告示第2号「避難器具の設置及び維持に関する技術上の基準の細目」(平成8年4月16日)において、各避難器具ごとの避難通路として規定されている。
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避難器具の設置に関する緩和
避難器具の設置における緩和規定については、消防法施行規則第26条に規定されている。そのうち、第1項~第4項は設置個数の減免、第5項~第7項は設置の免除となっている。以下、順に解説する。
第1項:収容人員の倍読み
設置すべき避難器具の個数については、令第25条第2項第1号の条文に規定されているということはすでに解説した。
①から⑥の基準について、収容人員がそれぞれ100人、200人、300人ごとに設置個数が定められているが、規則第26条第1項では、この収容人員について下記の条件を満たす場合に、その数字を2倍した人数に読み替えることができる。
一 主要構造部が耐火構造
二 避難階段・特別避難階段が2以上設けられていること。
第2項:避難階段・特別避難階段の設置による減免
避難器具の設置を要する階に、避難階へ通じる避難階段・特別避難階段がある場合、その階段の数だけ避難器具を減らすことができる。減じた結果が1未満となる場合は、避難器具を設置しないことができるので、設置免除となる。
ただし、このときの避難階段については注意が必要である。条文では「屋外に設けるもの及び屋内に設けるもので消防庁長官が定める部分を有するものに限る」とあり、屋外避難階段については条件はないが、屋内避難階段については、消防庁告示第7号(平成14年11月28日)の規定を満足する屋内避難階段のみ対象となる。
具体的には、各階ごとに直接外気に開放された、排煙のための開口部を有する避難階段で、開口部が下記の二条件をみたすものと規定されている。
一 開口部の開口面積は、2㎡以上であること。
二 開口部の上端は、当該階段の部分の天井の高さの位置にあること。
ただし、階段の部分の最上部における当該階段の天井の高さの位置に500c㎡以上の外気に開放された排煙上有効な換気口がある場合は、この限りでない。
いわゆる階段室型の共同住宅における、共用階段を想定したものといえるだろう。
第3項・第4項:渡り廊下・屋上避難橋による減免
主要構造部を耐火構造とした防火対象物に、渡り廊下を設けたり、その屋上に避難橋を設けた場合、渡り廊下を設置した階、また避難橋の場合はその直下階において、渡り廊下および避難橋の数を二倍した数だけ避難器具を減らすことができる。
この場合も前段と同様、減じた結果が1未満となる場合は、避難器具を設置しないことができる。ただし、渡り廊下・避難橋ともそれぞれ下記のとおり条件がある。
共通
主要構造部が耐火構造
渡り廊下
一 耐火構造又は鉄骨造であること。
二 渡り廊下の両端の出入口に自動閉鎖装置付きの特定防火設備(シャッターを除く)が設けられていること。
三 避難、通行及び運搬以外の用途に供しないこと。
避難橋
直下階から屋上に通じる避難階段・特別避難階段が2以上設けられていることにくわえ、下記のとおり
一 避難橋が設置されている屋上広場の有効面積は、100㎡以上であること。
二 屋上広場に面する窓・出入口が特定防火設備又は鉄製網入りガラス入り戸
出入口から避難橋に至る経路に避難上の支障がない
三 避難橋に至る経路に設けられている扉等は、避難のとき容易に開閉できるもの
渡り廊下・避難橋とも、複数の建築物相互間のものであるから、この場合の緩和はそれぞれの防火対象物双方に対して適用できる。また、渡り廊下については法文上必ずしも空中とは限定していない。したがって、地階相互間の渡り廊下についても同様に適用できる。
第5項第1号:避難器具を設置しないことができる階①
第5項からは設置の免除の規定となる。第5項第1項では、防火対象物の種類に応じて、イ~への6つの条件を満足する防火対象物の階について、避難器具の設置を免除している。
○ (12)項工場等、(15)項その他事務所等:下記3条件
イ 主要構造部が耐火構造
ホ 直通階段を避難階段・特別避難階段としたものであること
ヘ バルコニー等が避難上有効に設けられているか、又は2以上の直通階段により、階のあらゆる部分から重複経路なしに二方向避難が可能であること
○ (9)項~(11)項:上記の3条件にくわえ、
ニ 内装の仕上げを準不燃、又はスプリンクラー設備を階の主たる用途すべての部分に設置
○ (1)項~(8)項:上記の4条件にくわえ、
ロ 階を耐火構造の壁・床で区画(開口部は特定防火設備・または鉄製網入ガラス入りの戸)
ハ ロで区画された部分の収容人員が、令第25条第1項各号の収容人員の数値未満
第5項第2号:避難器具を設置しないことができる階②
次に示す条件を満足した階には避難器具を設置しないことができる。
イ 主要構造部が耐火構造
ロ 居室の外気に面する部分にバルコニー等が避難上有効に設けられており、かつ、当該バルコニー等から地上に通ずる階段・避難設備・避難器具等で避難が可能であるか、又は他の建築物に通ずる設備・器具が設けられていること
バルコニー等を経由した二方向避難を確保した階について、避難器具の設置を免除している。一見して第1項における(12)項・(15)項の規定と類似して読めるが、階段についての規定がないため、このときの階段は、避難階段・特別避難階段である必要はない。
またバルコニー等に避難器具を設置することで避難器具の設置を免除するのは一見奇異に思えるが、多数の避難器具の設置を要する階については、結果として減免となる。
なお、この規定については、(5)項ホテル・共同住宅等、(6)項病院・保育所等に限り、バルコニー等ではなくバルコニーに限られ、またバルコニーから避難する経路も階段に限られる。
第5項第3号:避難器具を設置しないことができる階③
次に示す条件を満足した階には避難器具を設置しないことができる。
イ 主要構造部が耐火構造
ロ 居室・住戸から直通階段に直接通じており、直通階段に面する開口部には特定防火設備を設けたもの
ハ 直通階段が避難階段(屋内避難階段については告示第7号の規定を満足)・特別避難階段
ニ 収容人員が30人未満
先に第2項の減免で解説した告示第7号の規定があるように、いわゆる階段室型の共同住宅を想定した緩和規定といえる。
第2項と重複するようだが、構造や収容人員等、こちらの第5項第3号のほうが条件が多い。こちらの免除規定の条件を満足できない場合には第2項の減免規定が用意されているかたちである。
階段に面する特定防火設備は、常時閉鎖または煙感知器連動の自動閉鎖でくぐり戸が設けられているものでなければならない。
第6項:小規模特定用途複合防火対象物における設置免除
小規模特定用途複合防火対象物とは、施行規則第13条第1項第2号に規定される、複合用途防火対象物(令別表第1(16)項イ)のひとつである。
具体的には複合用途のうち、令別表(1)項~(4)項、(5)項イ、(6)項、(9)項イの用途部分の床面積の合計が延面積の1/10以下であり、かつ、300㎡未満であるものをいう。
この小規模特定用途複合防火対象物のうち、(5)項ホテル・共同住宅等、(6)項病院・保育所等を有する階が、下記の条件を満足する場合、避難器具を設置しないことができる。
一 下階に令別表第1(1)項~(2)項ハ、(3)項、(4)項、(9)項、(12)項イ、(13)項イ、(14)項、(15)項に掲げる防火対象物の用途に供される部分が存しないこと。
二 避難階又は地上に直通する階段が2以上設けられていること。
三 収容人員:(5)項ホテル・共同住宅等は20人未満、(6)項病院・保育所等は30人未満
第7項:屋上広場による設置免除
主要構造部が耐火構造の防火対象物が、下記に示す条件を満足する屋上広場を有する場合、その屋上広場の直下階には避難器具を設置しないことができる。
ただし、その階から屋上広場に通ずる避難階段・特別避難階段が2以上設けられている必要がある。また、その階の用途が令別表第1の(1)項 劇場・集会所等、及び(4)項 物販店等である場合はこの規定は適用できない。
一 屋上広場の面積が1,500㎡以上
二 屋上広場に面する開口部が特定防火設備・鉄製網入ガラス入りの戸
三 屋上広場から避難階又は地上に通ずる直通階段で避難階段(屋内避難階段については告示第7号の規定を満足)・特別避難階段・その他避難設備・避難器具が設けられていること。
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最後に
避難器具は階段などの動線を使用せずに避難階まで移動するためのものであるから、その設置に際しては、各階の平面計画はもちろんのこと、避難階の外構計画においても制約を受ける。また、緊急時に使用するものであり、それだけに誤操作による事故のリスクも無視できない。
避難器具を使用することなく、階段等で避難することが可能であれば、それに越したことはない。緩和規定を有効に活用して、避難器具に頼らない計画としたい。単純に避難器具の減免というと、火災時の危険性が高まるかのような印象を抱きがちである。
しかし、緩和規定を満足するということは、それだけ避難が容易な計画であり、決して建築物の安全性とトレードオフで免除されているわけではないということは理解しておけば、クライアントへの説明もスムーズにできることと思う。
なお、消防用設備の設置においては、各行政が定める火災予防条例などの独自の基準を定めていることが多い。これは法第17条第2項において、地方の気候や風土の特殊性を考慮して、施行令とは異なる基準を定めることを認めていることによる。
ここまで解説してきた内容はすべて法及び施行令の範囲内での基準であり、各行政の独自基準は含まれていない。したがって、上記の内容だけでは各行政の独自基準は満足できないこともあることには注意していただきたい。
また、消防法に関しても、たとえば共同住宅等においては、他の消防用設備の設置緩和の規定として避難器具の設置が求められる場合もある。
計画にあたっては、事前の調査と、所轄行政との十分な事前協議が必要である。
一級建築士
不動産コンサルティングマスター
一級建築士としての経験を活かした収益物件開発、不動産投資家向けのコンサルティング事業、及びWEBサイトを複数運営。建築・不動産業界に新たな価値を提供する活動を行う。