住宅設計の常識、北側斜線制限3つの注意点と緩和

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出典:www.flickr.com

北側斜線制限とは、特に良好な住宅環境の確保が必要とされる、住居専用系地域を対象にした、建築物の高さの制限である。5mまたは10mを超える建築物の各部分の高さを、隣地境界線等からの真北方向の距離に比例して制限し、北側隣地から斜めの線で建築可能範囲を規定するものである。

 

文字通り、北側の隣地に対して配慮した建築物の高さ制限である。すなわち、北側の隣地に住宅が建築されることを想定し、北側住宅における、南からの日照の確保である。
ここでは、改めて北側斜線制限の原則を解説する。

 

北側斜線制限とは

まずは法文の定義を改めて確認する。北側斜線制限は建築基準法第56条第1項第3号に規定されている。以下に条文を示す。

(建築物の各部分の高さ)
第56条
第1項 建築物の各部分の高さは、次に掲げるもの以下としなければならない。
(中略)
第3号 第一種低層住居専用地域若しくは第二種低層住居専用地域内又は第一種中高層住居専用地域若しくは第二種中高層住居専用地域(次条第1項の規定に基づく条例で別表第4の2の項に規定する(一)、(二)又は(三)の号が指定されているものを除く。以下この号及び第7項第3号において同じ。)内においては、当該部分から前面道路の反対側の境界線又は隣地境界線までの真北方向の水平距離に1.25を乗じて得たものに、第一種低層住居専用地域又は第二種低層住居専用地域内の建築物にあつては5mを、第一種中高層住居専用地域又は第二種中高層住居専用地域内の建築物にあつては10mを加えたもの
(中略)
第5項 建築物が第1項第2号及び第3号の地域、地区又は区域の2以上にわたる場合においては、これらの規定中「建築物」とあるのは、「建築物の部分」とする。
第6項 建築物の敷地が2以上の道路に接し、又は公園、広場、川若しくは海その他これらに類するものに接する場合、建築物の敷地とこれに接する道路若しくは隣地との高低の差が著しい場合その他特別の事情がある場合における前各項の規定の適用の緩和に関する措置は、政令で定める。
(後略)

以上となる。これを簡単にまとめると、以下のとおりである。

○ 対象となる用途地域は第一種・第二種低層住居専用地域、第一種・第二種中高層住居専用地域
○ 第一種・第二種中高層住居専用地域で日影規制がある場合は対象外
○ 制限の基準は隣地境界線・道路境界線の対側
○ 制限の方向は真北方向
○ 制限内容は以下の通り
第一種・第二種低層住居専用地域:5m+勾配1.25
第一種・第二種中高層住居専用地域:10m+勾配1.25

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北側斜線制限における注意点

北側斜線制限においては、他の道路斜線や隣地斜線と異なる注意点が二点ある。以下、順に解説する。

建築物の高さ

まず一つ目の注意点は、制限される建築物の高さの緩和についてである。道路斜線や隣地斜線においては、一定規模以下の塔屋類については、建築物の高さに算入しないことができた。

ただし、この規定は北側斜線制限には適用されないことには注意が必要である。これは施行令の用語の定義に明文化されている。以下に条文を示す。

(面積、高さ等の算定方法) 施行令第2条 第1項
次の各号に掲げる面積、高さ及び階数の算定方法は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
(中略)
第6号 建築物の高さ 地盤面からの高さによる。ただし、次のイ、ロ又はハのいずれかに該当する場合においては、それぞれイ、ロ又はハに定めるところによる。
(中略)
ロ (中略)法第56条第1項第3号に規定する高さ(中略)を算定する場合を除き、階段室、昇降機塔、装飾塔、物見塔、屋窓その他これらに類する建築物の屋上部分の水平投影面積の合計が当該建築物の建築面積の1/8以内の場合においては、その部分の高さは、12mまでは、当該建築物の高さに算入しない。
(後略)

第2条第1項第6号ロにおいて除外されている法第56条第1項第3号が、北側斜線制限の条項である。したがって、道路斜線や隣地斜線で適用される塔屋等の高さ緩和が、北側斜線制限に限り適用されないということである。

屋上に階段室を設けた場合など、特に階段などは北側に配置する計画であることが多いため、注意が必要である。

制限の方向は真北方向

二つ目の注意点として、法文にある通り、制限となる基準は各境界等から真北方向であり、磁北方向ではないことに注意が必要である。念のために、簡単に解説すると、真北方向とは南中時に太陽が影を落とす方向であり、磁北方向とは方位磁石が指す北方向である。

一般的にこの二つの方向は一致せず、7度前後のずれがある。北側斜線制限は北側隣地に対する日照の確保がその趣旨であることから、基準となる制限の方向が真北方向であることは理解できるだろう。

問題となるのは、その真北方向のもとめ方である。一般的に、地図の北方向は磁北で示される。各自治体などが作成する、都市計画図などと呼ばれる地図には磁北に合わせて真北も示されているが、場合によっては真北が示されていない、また、磁北か真北か判断がつかないケースもある。

また、各自治体によっては、現地実測を求めるケースもあるので、真北方向の根拠については、念のため確認しておきたい。計画にあたって敷地測量をする場合は、測量の際に真北方向の測定もあわせて依頼するといいだろう。

後退距離

三つ目の注意点として、道路斜線において適用される、建築物の後退距離による緩和が、北側斜線制限においては適用されないという点である。とくに北側が道路の場合に混同しやすいので、注意が必要である。

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北側斜線制限の緩和

北側斜線制限においても、他の斜線制限と同様に、いくつかの緩和措置が規定されている。具体的には第56条第6項・第7号において条文化されており、緩和に関する措置についての規定は、施行令の第135条の4に規定されている。以下、施行令の条文に沿って順に解説する。

水面緩和

北側の隣地および、北側前面道路の反対側に水面等の空地がある場合には、隣地境界線・道路境界線の位置について緩和規定がある。以下に条文を示す。

施行令第135条の4 第1項
法第56条第6項の規定による同条第1項及び第5項の規定の適用の緩和に関する措置で同条第1項第3号に係るものは、次に定めるところによる。
第1号 北側の前面道路の反対側に水面、線路敷その他これらに類するものがある場合又は建築物の敷地が北側で水面、線路敷その他これらに類するものに接する場合においては、当該前面道路の反対側の境界線又は当該水面、線路敷その他これらに類するものに接する隣地境界線は、当該水面、線路敷その他これらに類するものの幅の1/2だけ外側にあるものとみなす。
(後略)

北側斜線制限は、北側隣地への日照の確保をその趣旨としたものである。しかし、一般的に水面等には建築物が建築されることがなく、日照を確保する必要性が低いことから、このような緩和措置が規定されているものである。

ここで注意したいことが2点ある。ひとつめは、同様な緩和措置が規定されている、道路斜線・隣地斜線との相違点である。

この二つの斜線制限の場合、対象となるものが「公園、広場、水面その他これらに類するもの(第134条・第135条の3)」であるのに対し、北側斜線制限の場合、上の法文の通り「水面、線路敷その他これらに類するもの」であって、公園・広場が緩和の対象として規定されていないことには注意したい。

ふたつめは、空地とみなされる線路敷の通達による定義である。住街発第1164号「線路敷に係る敷地の斜線制限の取扱いについて」(昭和46年11月19日)によると、駅舎部分については建築物とみなして斜線の緩和が認められていない。

したがって、施行令における線路敷には、駅舎等駅構内に面する部分は含まれないと考えるべきである。

高低差緩和

計画地と、隣地および前面道路の反対側の隣接地との間に高低差がある場合、高さの基準となる地盤面のレベルについて、緩和規定がある。以下に条文を示す。

第135条の4 第1項
法第56条第6項の規定による同条第1項及び第5項の規定の適用の緩和に関する措置で同条第1項第3号に係るものは、次に定めるところによる。
(中略)
第2号 建築物の敷地の地盤面が北側の隣地(北側に前面道路がある場合においては、当該前面道路の反対側の隣接地をいう。以下この条において同じ。)の地盤面(隣地に建築物がない場合においては、当該隣地の平均地表面をいう。次項において同じ。)より1m以上低い場合においては、その建築物の敷地の地盤面は、当該高低差から1mを減じたものの1/2だけ高い位置にあるものとみなす。
(後略)

繰り返しになるが、北側斜線制限は、北側隣地への日照の確保をその趣旨としたものである。したがって、北側隣地が計画地から相対的に高くなっている場合は、それだけ日照が確保されているわけであるから、斜線制限において緩和があることが理解できるだろう。

とはいえ、高低差がそのまま緩和されるわけではない。北側隣地が1m以上高くなっている場合に限り、1mを超える高さの1/2だけの緩和である。たとえば、北側隣地が計画地より1.5m高い場合、1mを超える0.5mについて、その1/2、すなわち25cmだけ制限高さが緩和される。

ここで注意したい点が、隣地の地盤面についての正当性である。そもそも隣地の高低差をどう測定し、建築物がある場合の地盤面をどう算定するのかという問題がある。

造成された分譲宅地地で、高低測量図がある場合はともかく、確実な資料がない場合、北側隣地の地盤面の考え方については、審査機関等との事前の打ち合わせが必要であろう。

天空率の計算による北側斜線制限の緩和

北側斜線制限においても、他の斜線制限と同様に、天空率の計算による北側斜線制限の緩和が規定されている。基準法第56条の該当する条文を以下に示す。

(建築物の各部分の高さ)
第56条 第7項 次の各号のいずれかに掲げる規定によりその高さが制限された場合にそれぞれ当該各号に定める位置において確保される採光、通風等と同程度以上の採光、通風等が当該位置において確保されるものとして政令で定める基準に適合する建築物については、それぞれ当該各号に掲げる規定は、適用しない。
(中略)
第3号 第1項第3号、第5項及び前項(同号の規定の適用の緩和に係る部分に限る。)
隣地境界線から真北方向への水平距離が、第一種低層住居専用地域又は第二種低層住居専用地域内の建築物にあつては4m、第一種中高層住居専用地域又は第二種中高層住居専用地域内の建築物にあつては8mだけ外側の線上の政令で定める位置

天空率じたいの解説はここでは控えるが、天空率の測定点である算定位置の基準線が、境界線等から真北方向に4m・8mと規定されている。これは北側斜線を北方向に延長した場合の、斜線と地盤面との交点に当たる。

この基準線上で、第一種・第二種低層住居専用地域では1m間隔、第一種・第二種中高層住居専用地域では2m間隔で配置した算定位置で天空率のチェックを行ない、すべての算定位置で天空率を満足する場合、北側斜線制限が緩和される。

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建築計画上の北側斜線制限の検討

計画における北側斜線制限の検討は、後退距離による緩和がないため、他の道路斜線や隣地斜線の検討に対して、比較的シンプルである。以下、検討の手順にそって解説する。

① 検討するポイント(建築物側)を定める
検討ポイントは二種類ある。建築物からの検討と、境界線からの検討である。建築物側の検討ポイントは、建築物の各端部の頂点、塔屋や棟など、建築物の高さが異なる部分の各端部の頂点である。また、3mごとに設定する平均地盤面の境界ポイントも検討ポイントとなる。

② 検討するポイント(境界線側)を定める
境界線側の検討ポイントは、境界線の頂点(交点)、地盤面に高低差がある場合、その高低差が生じる点も検討ポイントとなる。

③ 各ポイントにおける建築物から境界線までの最小距離を求める
建築物側のポイントから真北方向に、逆に境界線側のポイントからは南方向に直線を引き、それぞれの直線上で建築物から境界線までの最小距離を求める。

④ 求めた最小距離に勾配1.25を乗じた高さに5mまたは10mを加え、制限高さを求める。建築物の高さが制限高さを超えないことを確認する。

以上が大まかな検討の手順となる。

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最後に

北側斜線につ1いては後退距離による緩和が適用されないため、計画内容によって制限内容が変化するということがない。したがって、計画段階における検討はシンプルではあるが、それだけに後回しになったり、計画案の変更に伴うフィードバックもおろそかになりがちである。

また、計画地およびその周辺の地盤面に変化のある場合は、それに応じて制限内容が複雑になってくる。これは他の斜線制限と同様であるが、高低差緩和の項目でも解説した通り、判断に幅が生じる場合もあるので、審査機関とのじゅうぶんな打ち合わせが必要である。

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