設置するときになって慌てない、緩降機についての基本5つのポイント

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緩降機とは

緩降機(かんこうき)については、建築関係者でもよく知らない、中には実物を見たことのない人もいるかも知れない。ましてや、一般の人にいたっては、全く知られていないというのが実情ではないだろうか。ここでは、避難器具である緩降機について解説する。

まずは法文上の定義から解説する。緩降機は、消防法第17条の規定にもとづき、建築物への設置がもとめられている消防用設備のうち、消防法施行令第25条第2項において8種類規定されている、避難器具のひとつである。

後述する自治省令の定義によると、緩降機とは「使用者が他人の力を借りずに自重により自動的に連続交互に降下することができる機構を有するものをいう」とある。使用者がベルト状の着用具を身体に巻きつけ、自重により自動的に降下することができる器具で、降下速度を調整しながら一人ずつ降下するものをいう。

まず、垂らしたロープを伝って階下に避難することをイメージしてほしい。その場合はロープを手で手繰ったり、掴んだ手を滑らせたりして降下することになるだろう。いずれにしてもある程度の体力や技術が必要となる。

しかし、自動的にロープをゆっくり繰り出してくれる器具があれば、そのような体力や技術がなくとも、ロープを体に結びつけてぶら下がるだけで、降下して避難することができる。緩降機とはそのような器具である。

ロープにぶら下がって降下するため、使用する際に必要な空地が小さく、また取り付け器具であるため、バルコニーのような設置スペースも不要であることから、小規模な防火対象物に設置されることが多い避難器具である。

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緩降機の構造

緩降機は、金属製の避難はしごと同様に、消防法第21条の2および消防法施行令第37条に規定される「検定対象機械器具等」にあたる。つまり国家検定の対象品目に指定されている。

したがって、その構造・仕様は、自治省令第2号「緩降機の技術上の規格を定める省令」(平成6年1月17日)に規定されている。冒頭の緩降機の定義はこの省令による。

条文の文言によると、緩降機は調速器とロープ、着用具、それぞれをつなぐ連結部や緊結金具、ロープを巻き取るリールで構成される。井戸にある、水汲み用のつるべのようなものをイメージするといいだろう。

汲み桶を吊り下げる滑車の部分が調速器であり、降下速度を調整するブレーキのような機構をもっている。また、つるべの桶の部分に着用具が取り付けられている。つるべの場合、二つの桶で交互に水をくみ上げるように、ロープの両端に取り付けられた着用具で交互に降下するわけである。

 

緩降機の使用方法

ここでは、緩降機の具体的な使用方法と、その際の注意点を解説する。可搬式の場合、最初に行なうのは緩降機を取り付ける取付け具の設置である。緩降機は建物外部を垂直に降下するものであるから、その最上部に取り付ける必要がある。

一般的には窓を開けて、取り付け具を外へ差し出すように設置する。固定式の場合は取付け具が常時固定されているので、この作業は必要ない。

次に調速器の連結部を取付け具に取り付ける。一般的にはフック状になっており、さらに外れないようネジ等で固定することが多い。調速器にはあらかじめロープ・着用具が取り付けられている。

ロープは降下する高さに応じた長さがあるため、一方がリールに巻きとられた状態になっている。調速器を取り付けたら、ロープのリールに巻きとられたがわを外に垂らす。これはロープを室内に残した場合、何かに引っ掛かって降下できなくなるというトラブルを防ぐためである。

リールごと外に投げおろせばいいが、地上の人にあたらないよう確認が必要である。最後に降下である。ベルト状の着用具に体を通し、抜け落ちないようリングなどでしっかり締める。

その状態で外にぶら下がると、調速器が速度を調整するので、自重により一定速度で降下することができる。降下中に揺れて外壁面などに接触し、けがをすることがあるので、両手はいつでも外壁につけるようにしておく。

避難階まで降下できたら着用具をはずし、次の避難のために、速やかに降下地点から離れる。さきに外に垂らしておいたロープが入れ替わりに巻き上げられているので、そちらがわの着用具を使用して、次の降下・避難を行なう。

以上が緩降機の使用方法である。避難の際には収納箱などに設置・使用説明があるので、それにしたがって設置・避難を行なう。

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緩降機の設置基準

ここまで、緩降機がどのような避難器具であるのか、その定義・構造・使用方法について解説した。次に、緩降機の設置について解説する。

緩降機が設置できる防火対象物

まず、避難器具の設置が必要となる防火対象物については、その用途と規模ごとに、消防法施行令第25条第1項第1号~第5号に規定されている。ここでは詳しい解説は省略するが、緩降機については冒頭でふれた通り、小規模な防火対象物に設置されることが多い避難器具である。

したがって、収容人員10人以上での設置要件(第5号および第1号・第2号のかっこ書き)にもとづいて設置するケースが多いと思われる。その部分だけをまとめると以下の通りとなる。

○ 一階段のみの防火対象物で3階以上の階、ただし(2)項キャバレー等、(3)項飲食店等は2階も対象(第5号)
○ (5)項ホテル等、(6)項病院等の地階・2階以上の階で下階に(1)~(4)項、(9)項、(12)項イ、(13)項イ、(14)項、(15)項がある階(第1号、第2号)

また、緩降機はほとんどの防火対象物に設置することができる。ただし、上記にまとめた2項目の後者のうち、第1号に該当する防火対象物、(6)項病院等については、6階以上の階には設置することができない。ほかは10階まで設置が可能である。

とはいえ、器具の性質上、高層階に設置しても、実際には恐怖心で使用できないことが想定される。他の用途であっても、6階以上には設置しないほうが賢明である。

なお、これは余談であるが、ロープウェイのかご内には避難器具として緩降機が設置されている。天井に取り付け、床のハッチを開けて降下するものである。

なんらかのトラブルでロープウェイが動かなくなり、かご内に乗客が閉じ込められた場合に、この緩降機で地上に避難するものである。同様に、モノレールの車内にも緩降機が設置されている。

緩降機の設置基準

避難器具の設置に関する基準については、消防法施行令第25条第2項第2号・第3号、施行規則第27条に規定がある。緩降機については、施行規則第27条第1項第6号が該当条文となる。

また、その他の細目が、消防庁告示第2号「避難器具の設置及び維持に関する技術上の基準の細目」(平成8年4月16日)に規定されている。

以下、告示の内容を中心に、簡単にまとめると以下の通りとなる。

○ 緩降機をつり下げるフックの取付高さは、床面から1.5m以上1.8m以下
○ 外壁面から緩降機のロープの中心までの距離は15cm以上30cm以下
○ 緩降機を設置する開口部について、
・高さ0.8m以上×幅0.5m以上又は高さ1.0m×幅0.45m以上
・開放状態で固定できること
・開口部の下端は床から1.2m以下(床からの高さが0.5m以上の場合はステップ等を設ける)
○ 降下空間(避難器具設置階から地盤面まで器具周囲に確保すべき空間)について、
・緩降機(ロープ)を中心とした半径0.5mの円柱形の範囲を確保
・降下空間と架空電線との間隔1.2m以上確保

なお、避難階に必要な避難空地、避難通路については降下空間の最大幅員が必要となるため、有効幅員は1.0m以上が必要となる。

また、複数の階に緩降機を設置する場合は、施行規則第27条第1項第2号の規定にもとづき、設置位置をずらす必要があるが、この場合降下空間を共有するかたちで、器具相互の中心を0.5mまで近接して設置することができる。

その他、緩降機のロープの長さについても、下端が降着面から±0.5mとなるように設定する規定があるが、これについては器具メーカーにて対応する基準といえるだろう。

 

緩降機の設置緩和

避難はしごは避難器具のひとつであるから、消防法施行規則第26条に規定されている設置の緩和が適用される。そのうち、第1項~第4項は設置個数の減免、第5項~第7項は設置の免除となっている。

ここでは詳しい解説は省略するが、簡単にまとめると以下の通りとなる。

○ 設置個数の基準における収容人員の倍読み(第1項)
○ 避難階段・特別避難階段の設置による減免(第2項)
○ 渡り廊下・屋上避難橋の設置による減免(第3項・第4項)
○ 用途・構造・規模による設置免除(第5項)
○ 小規模特定用途複合防火対象物における設置免除(第6項)
○ 屋上広場の設置による設置免除(第7項)

緩降機を設置するような構造・規模の防火対象物の場合について解説すると、たとえば施行令第25条第1項5号の規定(一階段のみの防火対象物で3階以上の階)により緩降機を設置する場合、一の階段が避難階段・特別避難階段であれば、第2項の緩和規定の適用を検討することができるだろう。

緩和規定を満足するということは、それだけ避難が容易な計画であるということであるから、馴れない緩降機を使用するよりもむしろ安全であるという考え方もできるだろう。

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最後に

ここまで、消防法上の避難器具である緩降機について解説してきた。ところで、緩降機のような、自動で降下する避難器具について、過去にテレビの生放送番組でレポーターが落下する事故があったことをご存知の方もいるかも知れない。

一部では緩降機での事故だとされているが、事故のあった器具は携帯用のものであり、消防法に規定された緩降機ではない。緩降機の構造でも解説したとおり、緩降機は国家検定品に指定されており、その構造・仕様は省令によるものである。

また、可搬式のものはあるが、携帯式のものは存在しない。誤解をまねくような不完全な情報により、緩降機が危険であるかのような先入観があるとすれば残念なことである。

はいうものの、あまりなじみのない器具であるだけに、実際に使用する際にはトラブルが起こりがちである。消防用設備による事故については、消防庁が事故報告を取りまとめている。

避難器具による事故も報告されているが、それによると緩降機における事故は救助袋の次に報告されている。事故の内容としては着用具が外れたことによる落下、降下中の(おそらく接触による)負傷などがある。

いずれの場合も使用方法を十分確認することで防ぐことができる事故であると考えられる。

緩降機は開口部から真下に降下する避難器具であるから、避難はしごのようにバルコニーなどが必要なく、また斜降式救助袋のように避難階での展張スペースも不要である。

したがって、狭い敷地いっぱいに立つような小規模の建築では、垂直式救助袋とならんで設置されることが多い避難器具だといえる。それだけに、その設置基準や緩和規定についてはしっかり理解しておきたい。

なお、消防用設備の設置においては、各行政が定める火災予防条例などの独自の基準を定めていることが多い。これは法第17条第2項において、地方の気候や風土の特殊性を考慮して、施行令とは異なる基準を定めることを認めていることによる。

ここまで解説してきた内容はすべて法及び施行令の範囲内での基準であり、各行政の独自基準は含まれていない。したがって、上記の内容だけでは各行政の独自基準は満足できないこともあることには注意していただきたい。

計画にあたっては、事前の調査と、所轄行政との十分な事前協議が必要である。

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