あらためて確認したい、排煙設備の設置基準4つのポイント

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

「排煙設備」というと、多くの設計者がわかったようで、実はきちんと理解できていないというのが実情ではないだろうか。

中には確認申請時に漫然と1/50の開口をとって、それ以外の部分は告示で緩和…と機械的に設計を進めている場合もあるかもしれない。

今回は排煙設備とその設置基準について、あらためて解説する。

 

排煙設備とは

そもそも排煙設備とはどのようなものだろうか。まず最初に確認しておきたいことがある。建築における「排煙設備」は二種類存在するのだ。すなわち、建築基準法による排煙設備と、消防法による排煙設備である。

この2つについては一定の整合性があるものの、それぞれ細かい部分で設備の内容・設置基準に相違がある。まずは、それぞれの法規に規定される排煙設備について確認する。

建築基準法の排煙設備の構成

建築基準法の排煙設備は、防煙壁と排煙口、場合によってはこれらに排煙機を加えたかたちで構成される。

ここでは、防煙壁も排煙設備の構成要素として規定されていることに注意したい。排煙設備の構成については、基準法施行令第126条の3に規定されている。簡単にまとめると、以下の通りとなる(カッコ内は第126条の3の各号を示す)。

○ 防煙区画(第1号)
床面積500㎡ごとに防煙壁で区画
○ 排煙口(第3号)
防煙区画内において30m間隔で天井等から80cm以内に、外気または排煙風道に直結して設置
○ 排煙口の手動開放装置(第4号・第5号)
○ 排煙風道(第6号)
○ 排煙機(第8号・第9号)
排煙口が防煙区画の面積の1/50未満の場合に設置。120m3/分かつ防煙区画面積あたり1m3/分の排出能力を有すること
○ 排煙設備の予備電源(第10号)

排煙機の項目において、冒頭でも触れた「1/50の開口」に関係する規定が見られる。ただし、確認申請でチェックしているのがすなわちこの項目だというわけではない。これについては、後述する設置基準の項であらためて解説したい。

消防法の排煙設備の構成

消防法の排煙設備の構成については、消防法施行規則第30条に規定されている。これもまとめると以下の通りとなる(カッコ内は第30条の各号を示す)。

○ 排煙口(第1号)
防煙区画内において30m間隔で防煙壁より上部、天井高の1/2以上の部分に、外気または排煙風道に直結して設置
○ 防煙区画(第1号イ)
床面積500㎡(地下街は300㎡)ごとに防煙壁で区画
○ 給気口(第2号)
消火活動拠点(特別避難階段の附室、非常用エレベーターの乗降ロビー等)となる防煙区画に設置
○ 風道(第3号)
○ 手動起動装置(第4号イ)、自動起動装置(第4号ロ)
○ 排煙機(第5号)
排煙口が防煙区画の面積の1/50(消火活動拠点は2㎡または3㎡)未満の場合に設置。120m3/分かつ防煙区画面積あたり1m3/分の排出能力(地下街・消火活動拠点は別に規定)を有すること
○ 給気機(第6号)
○ 電源(第7号)、非常電源(第8号)
○ 配線(第9号)

防煙壁と排煙口の構成については、消防法の排煙設備も建築基準法とほぼ同様であるが、消防法の場合、場合により、排煙機に加え、給気口および給気機についても規定されている。

→無料プレゼント『知らないと恥を書く!建築関係者が絶対に知っておくべき法令大百科』PDF

 

建築基準法と消防法の排煙設備の違い

次に、建築基準法と消防法、それぞれの法規における排煙設備の位置づけについて、その相違点を解説する。ここまででみたとおり、ふたつの法律における排煙設備の構成については、それぞれ概ね同様なものとなっている。

しかし、それぞれの排煙設備を要求する、いわゆる法の理念には相違がある。その相違点を理解するためには、各法における排煙設備の規定について、文字通りの意味での法文上の位置づけが参考になる。

建築基準法における排煙設備規定は、基準法第126条の2に規定されている。これは基準法の中では第5章「避難施設等」の第3節に位置している。第5章ではほかに、避難階段や非常用照明が規定されている。

すなわち、基準法での排煙設備は、非常時における建築物の利用者の避難をたすける設備として規定されているわけだ。

いっぽう、消防法での排煙設備は、消防法第28条に規定されている。こちらは、消防法での位置づけでは、第2章「消防用設備等」の第3節第6款「消火活動上必要な施設に関する基準」に位置している。

つまり、基準法のような一般利用者のためのものではなく、消防隊が円滑な消火活動を行うため、その妨げとなる煙を取り除くための設備として位置づけられているのである。このことは消防庁の通知でも触れられている。

消防予第254号「消防法施行規則の一部を改正する省令の施行について」(平成11年9月29日)において、「排煙設備の主な設置目的は、①消防法にあっては消防隊の安全・円滑な消火活動の確保、②建築基準法にあっては在館者の安全・円滑な初期避難の確保であり、両法の趣旨が異なる」とされている。

このように、同様な設備であっても、法律の違いによってその設置する目的が相違している。このことは、次に解説する、排煙設備の設置基準にあらわれているので、あらためて理解しておきたい。

 

排煙設備の設置基準

それでは次に、排煙設備の設置基準について見てゆく。設置基準も、建築基準法・消防法それぞれに規定されている。

建築基準法の排煙設備の設置基準

建築基準法の排煙設備の設置基準については、基本的な設置基準が基準法施行令第126条の2に規定されている。簡単にまとめると、以下の通りとなる。

・施行令第126条の2
○ 別表第1(い)欄(1)~(4)項の特殊建築物で、延べ面積500㎡を超えるもの
○ 階数が3以上で、延べ面積500㎡を超える建築物
○ 令第116条の2第1項第2号に該当する、窓その他の開口部を有しない居室(天井又は天井から下方80cm以内の開口部が、床面積の1/50未満のもの)
○ 延べ面積1,000㎡を超える建築物の居室で、床面積が200㎡を超えるもの

上記のいずれかに当てはまる場合には、原則として排煙設備の設置が必要となる。見ての通り、かなり広範なケースで、排煙設備が必要とされることが理解できる。

これも、先に解説した、建築基準法の排煙設備が一般利用者の避難のためのものであるという法の趣旨に照らし合わせると、より理解がすすむだろう。

また、上記の第126条の2のほか、第123条、第129条の13の3第3項第2号、第128条の3第1項第6号においても、排煙設備に関する規定がある。これもまとめると、以下の通りとなる。

○ 特別避難階段付室への設置(令第123条)
○ 非常用EV乗降ロビーへの設置(令第129条の13の3第3項第2号)
○ 地下街の地下道への設置(令第128条の3第1項第6号)

上記の、令第126条の2の設置基準の中で、また「1/50の開口」に関係する規定があることに注意してほしい。

条文では、令第116条の2(窓その他の開口部を有しない居室等)第1項第2号に該当する開口部と表現されているが、これがすなわち1/50の開口ということである。条文では以下の通りとなっている。

・施行令第116条の2(窓その他の開口部を有しない居室等)
第1項第2号 開放できる部分(天井又は天井から下方80cm以内の距離にある部分に限る。)の面積の合計が、当該居室の床面積の1/50以上のもの

すなわち、確認申請時にチェックする1/50の開口については二種類、二段階のチェックとなっていることに注意してほしい。まずは上記の令第116条の2第1項第2号の開口部、これは排煙設備の設置基準に合致しているかどうかのチェックである。

つぎに排煙設備の構成で前述した、令第126条の3第1項第8号の排煙口、これは排煙機の設置基準に合致しているかどうかのチェックである。

どちらも同じ1/50の開口面積であるが、自分が今どちらのチェックをしているのかについては意識しておく必要がある。

令第116条の2第1項第2号の開口部は条文上「開放できる部分」であるが、令第126条の3第1項第8号の開口部は「排煙口」である。このふたつには、手動開放装置(オペレーター)の要・不要という相違がある。

つまり、同じ天井ぎわの1/50の開口であっても、令第116条の2第1項第2号を満足する(排煙設備不要の)開口部であれば、それは排煙口ではないので、オペレーターは必要ないし、クレセント位置なども規定はない。

いっぽう、令第126条の3第1項第8号の開口部であれば、それは排煙口であり、オペレーターの設置や、クレセントの床からの高さなどに規定がある。

冒頭でふれたように、この部分の確認を漫然とすすめていると、排煙口でない開口部にもオペレーターを設置してしまったりするわけだ。そのようなことのないよう、条文については正しく理解してほしい。

消防法の排煙設備の設置基準

消防法の排煙設備の設置基準については、消防法施行令28条第1項に規定されている。以下に条文を示す。

(排煙設備に関する基準)
消防法第28条 排煙設備は、次に掲げる防火対象物又はその部分に設置するものとする。
一 別表第1(16の2)項に掲げる防火対象物で、延べ面積が1,000㎡以上のもの
二 別表第1(1)項に掲げる防火対象物の舞台部で、床面積が500㎡以上のもの
三 別表第1(2)項、(4)項、(10)項及び(13)項に掲げる防火対象物の地階又は無窓階で、床面積が1,000㎡以上のもの
(後略)

別表の用途について記載してまとめると、以下の通りとなる。

○ 延べ面積1,000㎡以上の地下街
○ 劇場・集会場の舞台部分で、その部分の面積が500㎡以上のもの
○ キャバレー・遊技場等、物販店舗等、停車場等、駐車場等で、地階・無窓階で、かつ床面積1,000㎡以上のもの

先に解説した、建築基準法の排煙設備の設置基準と比較して、かなり限定された条件であることが見て取れる。これについても、消防法と建築基準法の排煙設備の趣旨の相違から理解できるだろう。

結果として、建築基準法の排煙設備が要求されない場合には、消防法の排煙設備が要求されるケースはあまりないと言っていい。

これは先に解説した、法の趣旨の観点からも理解できるだろう。ただし、例外となりうるのが、第3号に規定される地階・無窓階の駐車場だろう。

排煙が必要な特殊建築物にはあたらず、居室でもないので、階数が3未満で延べ面積が500㎡以下であれば、基準法上の排煙設備は不要だが、消防法では必要となることには注意が必要である。

→無料プレゼント『知らないと恥を書く!建築関係者が絶対に知っておくべき法令大百科』PDF

 

排煙設備の設置緩和

次に排煙設備の緩和規定について解説する。

建築基準法の排煙設備緩和

建築基準法の排煙設備の緩和規定については、基準法施行令第126条の2第1項ただし書き(第1号から第5号)および第2項、また、令第126条の2第1項第5号にもとづく、建設省告示第1436号「火災が発生した場合に避難上支障のある高さまで煙又はガスの降下が生じない建築物の部分を定める件 」(平成12年5月31日)にその設置緩和が規定されている。

基準法施行令第126条の2は、先に解説した、排煙設備の設置基準であるが、そのただし書きが緩和規定となっている。簡単にまとめると以下の通りとなる(カッコ内は第1項ただし書きの各号を示す)。

○ 床面積100㎡(共同住宅は200㎡)以内に準耐火構造の床・壁・防火設備で区画された特殊建築物の部分(第1号)
○ 学校・体育館・ボーリング場・スポーツの練習場等(第2号)
○ 階段・昇降機の昇降路(乗降ロビーを含む)等(第3号)
○ 機械製作工場・不燃性物品の保管倉庫等で主要構造部が不燃材料のもの等(第4号)
○ 火災が発生した場合に避難上支障のある高さまで煙又はガスの降下が生じない建築物の部分として国土交通大臣が定めるもの(第5号)

そして、第5号にもとづき規定されているのが告示第1436号である。その内容を抜粋して以下に示す。

建設省告示第1436号
「火災が発生した場合に避難上支障のある高さまで煙又はガスの降下が生じない建築物の部分を定める件 」
(平成12年5月31日)

(前略)
建築基準法施行令(以下「令」という。)第126条の2第1項第5号に規定する火災が発生した場合に避難上支障のある高さまで煙又はガスの降下が生じない建築物の部分は、次に掲げるものとする。
(中略)
4 次のイからホまでのいずれかに該当する建築物の部分
(中略)
ニ 高さ31m以下の建築物の部分(法別表第1(い)欄に掲げる用途に供する特殊建築物の主たる用途に供する部分で、地階に存するものを除く。)で、室(居室を除く。)にあっては(1)又は(2)に、居室にあっては(3)又は(4)に該当するもの

(1) 壁及び天井の室内に面する部分の仕上げを準不燃材料でし、かつ、屋外に面する開口部以外の開口部のうち、居室又は避難の用に供する部分に面するものに法第2条第9号の2ロに規定する防火設備で令第112条第14項第1号に規定する構造であるものを、それ以外のものに戸又は扉を、それぞれ設けたもの
(2) 床面積が100㎡以下で、令第126条の2第1項に掲げる防煙壁により区画されたもの
(3) 床面積100㎡以内ごとに準耐火構造の床若しくは壁又は法第2条第9号の2ロに規定する防火設備で令第112条第14項第1号に規定する構造であるものによって区画され、かつ、壁及び天井の室内に面する部分の仕上げを準不燃材料でしたもの
(4) 床面積が100㎡以下で、壁及び天井の室内に面する部分の仕上げを不燃材料でし、かつ、その下地を不燃材料で造ったもの

ホ 高さ31mを超える建築物の床面積100㎡以下の室で、耐火構造の床若しくは壁又は法第2条第9号の2に規定する防火設備で令第112条第14項第1号に規定する構造であるもので区画され、かつ、壁及び天井の室内に面する部分の仕上げを準不燃材料でしたもの

よく活用される緩和規定が、上記に引用した告示第1436号の4-ニ-(1)~(4)、および4-ホである。区画・内装の仕上げによって、排煙設備が緩和される。

ただし、これらは建築基準法の緩和規定であり、消防法には無関係である。これらの緩和規定を適用しても、なお消防法の排煙設備が必要な場合がありうるということには注意してほしい。

消防法の排煙設備緩和

消防法の排煙設備の緩和規定については、消防法施行令第28条第3項に緩和規定が、さらに施行規則第29条にその条件が規定されている。以下、条文に沿いながら順に解説する。

設置基準の項で解説した通り、消防法施行令の第28条は、第2項までは排煙設備の設置基準の規定である。その第3項において、それまでの設置規定にたいする免除が規定されている。第3項の条文は以下のとおりである。

消防法施行令第28条第3項
第1項各号に掲げる防火対象物又はその部分のうち、排煙上有効な窓等の開口部が設けられている部分その他の消火活動上支障がないものとして総務省令で定める部分には、同項の規定にかかわらず、排煙設備を設置しないことができる。

そして、上記の「排煙上有効な窓等の開口部が設けられている部分その他の消火活動上支障がないものとして総務省令で定める部分」について、消防法施行規則第29条に具体的な規定がある。以下に条文を示す。

(排煙設備の設置を要しない防火対象物の部分)
消防法施行規則第29条
令第28条第3項 の総務省令で定める部分は、次の各号に掲げる部分とする。
一  次のイ及びロに定めるところにより直接外気に開放されている部分
イ 次条第1号イからハまでの規定の例により直接外気に接する開口部(常時開放されているものに限る。ロにおいて同じ。)が設けられていること。
ロ 直接外気に接する開口部の面積の合計は、次条第6号ロの規定の例によるものであること。

二  令別表第1に掲げる防火対象物又はその部分(主として当該防火対象物の関係者及び関係者に雇用されている者の使用に供する部分等に限る。)のうち、令第13条第1項の表の上欄に掲げる部分、室等の用途に応じ、当該下欄に掲げる消火設備(移動式のものを除く。)が設置されている部分

三  前2号に掲げるもののほか、防火対象物又はその部分の位置、構造及び設備の状況並びに使用状況から判断して、煙の熱及び成分により消防隊の消火活動上支障を生ずるおそれがないものとして消防庁長官が定める部分

他の条文を参照している部分もあるのでわかりにくいが、簡単にまとめると、第1号は要するに排煙設備としての排煙口とほぼ同じ基準の開口部が設けられている部分である。しかも常時開放とあるので、いわば半屋外空間となる。

第2号は、消防法施行令第13条(水噴霧消火設備等を設置すべき防火対象物)の規定にもとづき、水噴霧・泡・不活性ガス・ハロゲン化物・粉末消火設備等の固定式特殊消火設備が設置されている部分であり、この部分については、消防法の排煙設備は設置が免除されている。

→無料プレゼント『知らないと恥を書く!建築関係者が絶対に知っておくべき法令大百科』PDF

 

最後に

以上、ここまで建築基準法と、消防法それぞれの排煙設備について、その構成・設置基準・緩和規定、またそれぞれの相違点について解説してきた。

建築基準法の排煙設備と消防法の排煙設備については、それぞれの設置基準をよく理解して適切に設置したい。

また、緩和規定は有効に活用したいが、たとえば基準法の緩和で設置免除した場合でも、消防法により排煙設備が必要となるケースもあるため、じゅうぶん注意が必要である。

また、消防用設備の設置においてはもう一つ注意しておきたい点がある。それは各行政が定める火災予防条例などの独自の基準である。

これは法第17条第2項において、地方の気候や風土の特殊性を考慮して、施行令とは異なる基準を定めることを認めていることによる。

ここまで解説してきた内容はすべて法及び施行令の範囲内での基準であり、各行政の独自基準は含まれていない。したがって、上記の内容だけでは各行政の独自基準は満足できない場合もありえることには注意していただきたい。

【記事監修】 山田 博保

株式会社アーキバンク代表取締役 建築マーケター/一級建築士     建築業界での経験を活かしたWEBメディアを運営。内装工事マッチングサイト「アーキクラウド」創業者。WEBコンサル事業、コンテンツ販売事業にも携わる。Facebookお友達申請大歓迎です。その他WEB集客、自社メディア構築、ビジネスモデル構築に関するコンテンツは公式サイトより。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

SNSでもご購読できます。