設計者も知っておきたい、消防計画書5つのポイント

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「消防計画書」になじみのある設計者は、それほど多くないだろう。

まして、みずから消防計画書を作成したことのある設計者となると、ほとんどいないのではないだろうか。

それも当然のことであり、消防計画書の作成は防火管理者の業務であり、設計者が作成する書類ではない。

しかしながら、消防計画書の作成にあたっては、設計者のサポートが必要なケースもある。ここでは設計者として把握しておくべき、消防計画書の内容について解説する。

 

消防計画書とは

まずは消防計画書とは何であるのか、その内容について解説する。消防計画書とは、その名称のとおり、防火対象物の消防計画を定めた書類である。ではその消防計画とは何だろうか。

消防計画とは、火災等の災害の予防・人命の安全確保・被害の軽減を図ることを目的として、必要な事項を定めるものであり、それを文書にした消防計画書は、いわば防災マニュアルであるといえるだろう。

消防計画とそれを記載した消防計画書は、消防法にもとづき、一定規模以上の防火対象物について作成が義務付けられているものである。また、消防計画書はただ作成するだけでなく、所轄消防への届出が必要となる。

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消防計画書が必要となる防火対象物

消防計画書に記載される消防計画については、消防法第8条に、その作成の義務が規定されている。

法第8条は防火管理者の選定について規定した条文であるが、その中で防火管理者の責務として「消防計画の作成」が定められているのである。

つまり、防火管理者が必要となる防火対象物については、同様に消防計画書も必要となるということである。消防計画書は防火管理者とセットであるということは覚えておきたい。

ここで、防火管理者が必要となる防火対象物について、以下に条文を引いて、あらためて確認する。

消防法第8条
学校、病院、工場、事業場、興行場、百貨店(これに準ずるものとして政令で定める大規模な小売店舗を含む。以下同じ。)、複合用途防火対象物(防火対象物で政令で定める二以上の用途に供されるものをいう。以下同じ。)その他多数の者が出入し、勤務し、又は居住する防火対象物で政令で定めるものの管理について権原を有する者は、政令で定める資格を有する者のうちから防火管理者を定め、政令で定めるところにより、当該防火対象物について消防計画の作成、当該消防計画に基づく消火、通報及び避難の訓練の実施、消防の用に供する設備、消防用水又は消火活動上必要な施設の点検及び整備、火気の使用又は取扱いに関する監督、避難又は防火上必要な構造及び設備の維持管理並びに収容人員の管理その他防火管理上必要な業務を行わせなければならない。
(後略)

また、政令で定めるものとして、消防法施行令により細目の規定がある。こちらも以下に条文を示す。

(防火管理者を定めなければならない防火対象物等)
消防法施行令第1条の2
法第8条第1項の政令で定める大規模な小売店舗は、延べ面積が1,000㎡以上の小売店舗で百貨店以外のものとする。
2 法第8条第1項の政令で定める二以上の用途は、異なる二以上の用途のうちに別表第1(1)項から(15)項までに掲げる防火対象物の用途のいずれかに該当する用途が含まれている場合における当該二以上の用途とする。
(中略)
3 法第8条第1項 の政令で定める防火対象物は、次に掲げる防火対象物とする。
一 別表第1に掲げる防火対象物(同表(16の3)項及び(18)項から(20)項までに掲げるものを除く。次条において同じ。)のうち、次に掲げるもの
イ 別表第1(6)項ロ、(16)項イ及び(16の2)項に掲げる防火対象物(同表(16)項イ及び(16の2)項に掲げる防火対象物にあつては、同表(6)項ロに掲げる防火対象物の用途に供される部分が存するものに限る。)で、当該防火対象物に出入し、勤務し、又は居住する者の数(以下「収容人員」という。)が10人以上のもの
ロ 別表第1(1)項から(4)項まで、(5)項イ、(6)項イ、ハ及びニ、(9)項イ、(16)項イ並びに(16の2)項に掲げる防火対象物(同表(16)項イ及び(16の2)項に掲げる防火対象物にあつては、同表(6)項ロに掲げる防火対象物の用途に供される部分が存するものを除く。)で、収容人員が30人以上のもの
ハ 別表第1(5)項ロ、(7)項、(8)項、(9)項ロ、(10)項から(15)項まで、(16)項ロ及び(17)項に掲げる防火対象物で、収容人員が50人以上のもの
(後略)

上記を簡単にまとめると、以下の通りとなる。

消防計画(防火管理者)が必要となる防火対象物
収容人員にかかわらず必要
○ 学校、病院、工場、事業場、興行場、百貨店、延べ面積1,000㎡以上の小売店舗
○ 複合用途防火対象物のうち、別表第1(1)項から(15)項の用途を含むもの
収容人員10人以上
○ (6)項ロ 特別養護老人ホーム等、またこれらの用途を含む(16)項イ 複合用途防火対象物、(16の2)項地下街
収容人員30人以上
○ (1)~(4)項、(5)項イ ホテル、(6)項病院・保育所等のうち上記②以外のもの、(9)項イ 公衆浴場、(16)項イ 複合用途防火対象物のうち上記②以外のもの
収容人員50人以上
○ (5)項ロ 共同住宅等、(7)~(8)項、(9)項ロ、(10)~(15)項、(16)項ロ、(17)項

ここでは省略したが、その他、工事中の建築物や建造中の船舶についても、一定条件をみたすものについては防火管理者が必要となる。この通り、消防計画(防火管理者)を要する防火対象物の範囲がかなり大きいことが見て取れる。

逆に、それぞれの用途ごとに消防計画が不要となる規模を逆算すると、かなり小規模な防火対象物に限られることが確認できるだろう。多くの防火対象物において、消防計画の作成がもとめられているのである。

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だれが消防計画書を作成するのか

消防計画を作成するのは、防火対象物の防火管理者であるということは、前段で条文を引用した消防法第8条に規定されている通りである。

防火対象物の管理権限者は、防火管理者を選定し、その防火管理者に消防計画を作成させなければならない。消防計画の作成は防火管理者の主要な業務であるといえる。

たとえばテナントビルなど、管理権限が複数にわかれた防火対象物で、一定の規模以上のものについては、防火対象物全体を統括管理する統括防火管理者を置き、その下に管理権限ごとに防火管理者を置く、いわゆる共同防火管理が行われる。

このような場合、統括防火管理者も含め、それぞれの防火管理者が各々の管理する部分についての消防計画を作成することになる。

このとき、統括防火管理者は防火対象物全体についての消防計画を作成することが、施行令第4条の2において「統括防火管理者の責務」として規定されている。
また、統括防火管理者の下位に置かれる各防火管理者が作成する消防計画は、必然的に統括防火管理者が作成する全体の消防計画の下位に位置することになり、したがって、全体の消防計画との間に齟齬を生じるような内容であってはならない。

また、消防法施行令第3条の2においては、防火管理者が作成した消防計画について、所轄消防への届出を規定している。消防計画の内容に変更を加えた場合も、同様に届出が必要である。

この届出については、条文上では防火管理者の責務とされているが、実際に提出する消防への届出書は、管理権限者と防火管理者の連名となっていることが多い。

 

消防計画に記載する事項

では、消防計画にはどのような事項を定めて記載するのか。消防計画に記載する事項は、消防法施行規則にその細目が規定されている。

もっとも基本的な記載事項は施行規則第3条第1項第1号に規定されている。抜粋すると、以下のとおりである。

○ 自衛消防の組織に関すること。
○ 防火対象物についての火災予防上の自主検査に関すること。
○ 消防用設備等の点検及び整備に関すること。
○ 避難通路、避難口、安全区画、防煙区画その他の避難施設の維持管理及びその案内に関すること。
○ 防火壁、内装その他の防火上の構造の維持管理に関すること。
○ 定員の遵守その他収容人員の適正化に関すること。
○ 防火管理上必要な教育に関すること。
○ 消火、通報及び避難の訓練その他防火管理上必要な訓練の定期的な実施に関すること。
○ 火災、地震その他の災害が発生した場合における消火活動、通報連絡及び避難誘導に関すること。
○ 防火管理についての消防機関との連絡に関すること。
○ 増改築・移転・修繕・模様替えの工事中における防火管理者・補助者の立会い、その他火気使用・取扱の監督に関すること。
○ その他防火管理に関し必要な事項

また、施行規則第3条第2項以降にも記載事項が定められているので、以下にまとめる。

○ 防火管理について外部業者に業務委託している場合は、その連絡先
○ 管理権原が分かれている防火対象物の場合、その消防計画における権原の範囲

消防計画に定める事項は、火災に関する項目だけではない。地震に関する項目についても必要となる場合がある。

特定の地域における、特定の用途の防火対象物については、地震およびそれにともなう津波についても、その被害の防止・軽減のための対策に関する事項を消防計画に定めることが、施行規則第3条第4項以降に規定されている。

特定の地域とは、以下に示す法律により指定された地域であり、特定の用途についてはそれぞれの法律の施行令において指定されている。

○ 大規模地震対策特別措置法
○ 南海トラフ地震に係る地震防災対策の推進に関する特別措置法
○ 日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震に係る地震防災対策の推進に関する特別措置法

上記三法の指定地域における、指定の施設については、円滑な避難の確保や、防災訓練の実施に関することなどが、追加で消防計画に定めるべき事項として規定されている。

消防計画にはこれらの事項について規定する必要があり、その内容を文書にしたものが消防計画書である。

ただ、実際には、それぞれの所轄消防において消防計画書のひな型が用意されていることも多く、それを下敷きにすることで、おのずと必要な項目を網羅できるだろう。

最後に解説した地震に関する指定地域についても、各消防の所轄地域内に指定地域が存在する場合などは、ひな型もそれに対応していることと思われる。

とはいうものの、ひな型の文言については、ここで解説した施行規則第3条にもとづくものであることは、あらためて確認しておきたい。

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設計者の役割

消防計画書は防火管理者が作成するものであり、所轄消防において実施される防火管理者講習においても、その作成についての説明がなされる。

しかし、消防計画書はそれだけで作成できるものではなく、作成に当たっては、設計者からの適切な情報の提供が不可欠である。前段で解説した、消防計画に定めるべき事項をもういちど確認してほしい。

たとえば「消防用設備等の点検・整備に関すること」といっても、そもそもその建築物にどのような消防用設備が設置されているのか、設計者からの説明がなければ、防火管理者には設備の有無がわからず、点検・整備に関することも規定することはできないだろう。

同様に、避難経路や区画についても、シンプルな建築計画であればともかく、少し複雑な計画になれば設計者からの情報提供は不可欠である。また、収容人員の適正化にあたっては、その算定方法の周知も必要となる。

このように、設計者の協力なくして消防計画の作成は不可能であることがわかる。もちろん、建築物の竣工時には、その引き渡しに際して現場説明が行われるのが常ではあるが、それは必ずしも防火管理者に対してなされるとは限らない。

また、そもそも引き渡し説明だけで消防計画が作成できるようなものでもない。したがって設計者としては、引き渡し説明で事足りると考えるのではなく、積極的に消防計画の作成に協力することが望ましい。

消防計画書は使用開始後、遅滞なく提出する必要がある。一般的には引き渡し前、防火管理者を選定した後に、消防計画の作成が行われる。設計者としては、それらのタイミングにあわせて作成の協力について問い合わせるといいだろう。

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最後に

以上、ここまで消防計画書の位置づけ、内容と、その作成において設計者の果たすべき役割について解説した。最後に、あらためて消防計画書の意義について確認しておきたい。

消防計画書は防火対象物の防火管理上、重要なものであり、消防計画の作成は防火管理者の主要な業務のひとつである。消防計画の作成については、防火管理者講習においても説明があり、所轄の消防が基本的なひな型を用意しているケースも多い。

それらを参考にするのはもちろんであるが、本来は各防火対象物に即した消防計画を作成すべきであり、安易に引き写しにすべきではない。

また、消防計画は防火管理者が作成するものであるが、最終的な防火管理の責任者はあくまでも管理権原者であり、管理権原者の責任は、防火管理者を選任した時点でなくなるわけではない。

消防計画の実効性を確保するためには、管理権原者の防火意識も重要である。

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