避難器具の基本を再確認、避難はしご5つのポイント

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避難はしごについて

避難はしごとは、読んで字のごとく、下階への避難のために使用するはしごのことである。はしごそのものが一般的な道具であるだけに、設置してあれば誰でも容易に利用することができる。

したがって、避難器具としては広く用いられているものである。たとえば、共同住宅バルコニーの床に埋め込む、ハッチ式のはしごや、事務所ビルなどのバルコニーに、階ごとに千鳥に設置された固定式のはしごなどがあげられる。

これらは、実務において設置することはもちろん、既存の建築物に設置されているものを実際に目にすることも多いだろう。ここでは避難はしごについて解説する。

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避難はしごの種類

ひとくちに避難はしごといっても、消防法上の避難設備としては、さまざまな種類がある。まずはしごの材質として、金属製のものと、それ以外のものに分類される。

また、金属製・それ以外のものそれぞれにおいて、使用方法により、固定はしご、立てかけはしご、吊り下げはしごの3種類に分類できる。なお金属製のものに限り、吊り下げはしごのうち、ハッチ用つり下げはしごが規定されている。

これらをまとめると、避難はしごは金属製のもので4種類、それ以外のもので3種類、計7種類に分類されることになる。

なお、金属製の避難はしごは、緩降機と同様に、消防法第21条の2および消防法施行令第37条に規定される「検定対象機械器具等」にあたる。

つまり国家検定の対象品目に指定されている。したがって、その構造・仕様は、自治省令第3号「金属製避難はしごの技術上の規格を定める省令」(昭和40年1月12日)に規定されている。

いっぽう、それ以外の避難はしごは、消防庁告示第1号「避難器具の基準」(昭和53年3月13日)に規定されている。

以下、使用方法による分類にそって、順に解説する。

固定はしご

あらかじめ建築物に取り付けた状態のものをいう。したがって一般的には金属製であり、つまり検定品となる。

検定に合格して市販化されているものとしては、横桟と縦棒のジョイントがヒンジ状になっており、横桟を縦棒の中にたたみこむかたちで収納するタイプのものなどがある。

なお、鋼材などをコの字状に加工して外壁に取り付けた、いわゆる「さるばしご」については、金属製ではあるが、検定品ではなくても固定式の金属製避難はしごとして取り扱われる。これは消防法施行令第32条の規定によるものである。

あらかじめ建築物に取り付けた状態のものをいう。したがって一般的には金属製であり、つまり検定品となる。検定に合格して市販化されているものとしては、横桟と縦棒のジョイントがヒンジ状になっており、横桟を縦棒の中にたたみこむかたちで収納するタイプのものなどがある。

なお、鋼材などをコの字状に加工して外壁に取り付けた、いわゆる「さるばしご」については、金属製ではあるが、検定品ではなくても固定式の金属製避難はしごとして取り扱われる。これは消防法施行令第32条の規定によるものである。

立てかけはしご

いわゆるはしごである。普段は収納しておき、非常時に取り出し、立てかけて避難する。これも金属製のものは検定品であるが、立てかけはしごで国家検定を取得しているものは、ここ数年では存在しない。過去に検定を取得しているものでも、現在市販されているものはおそらくないだろう。

吊り下げはしご

前段の立てかけはしごが、下階から上階へ立てかけるものであるのに対し、上階から下へ吊り下げて使用するものが吊り下げはしごである。

いわゆる縄ばしごを想定すると理解しやすいだろう。縄ばしごは金属式ではないが、同様のはしごで金属製のものとなると、その収納方法に、折りたたみ式や伸縮式などの種類がある。

開口部から下に垂らして使用するため、上端部にはフックや自在金具が一体となっている。このフックや自在金具を開口部や腰壁に固定し、はしご部分を吊り下げて避難する。

ハッチ用吊り下げはしご

ハッチ用吊り下げはしごとは、前段の金属製吊り下げはしごの一種である。「金属製避難はしごの技術上の規格を定める省令」にある文言では、つり下げはしごのうち、避難器具用ハッチに格納されているものをいう。

ここでいう避難器具用ハッチとは、省令では「金属製避難はしごを常時使用可能の状態で格納することのできるハッチ式の取付け具」と定義されている。

つまり、バルコニーなどの床面にあけた開口部のハッチそれ自体に、金属製の吊り下げはしごが収納されているものが、ハッチ用吊り下げはしごである。共同住宅のバルコニーなどに多く設置されている。

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避難はしごの構造

金属製の避難はしごが国家検定の対象品目に指定されていること、その構造・仕様が自治省令に、また、その他のものについては消防庁告示に、それぞれ規定されていることについてはすでにふれた。

いずれにしても、実際の設計業務の中では、メーカーによる既製品の選定ということがほとんどである。したがって、これらの構造・仕様については特段気にすることはないだろう。

ただし、各製品について、金属製のものについては検定品であること、あるいはそれ以外のものについては、告示の仕様を満足していることについては確認しておく必要がある。

 

避難はしごの設置

ここまで、避難はしごの種類・構造について解説した。次に、避難はしごの設置について解説する。

避難はしごが設置できない防火対象物

避難はしごはほとんどの防火対象物に設置することができる。ただし、消防法施行令第25条第1項第1号に該当する防火対象物、(6)項病院等については、3階以上の階には避難はしごを設置することができない。

また、施行規則第27条第1項第4号ホおよび第5号ニの規定により、4階以上の階に固定はしご・吊り下げはしごを設けるときは、金属製のものとしなければならない。

さらに、消防庁告示第2号「避難器具の設置及び維持に関する技術上の基準の細目」(平成8年4月16日)の規定により、地階に避難はしごを設ける場合は、固定式避難はしごを設置しなければならない。

避難はしごの設置基準

避難器具の設置に関する基準については、消防法施行規則第27条にその細目が規定されている。避難はしごについては、固定はしご・つり下げはしごについて、それぞれ第1項第4号・第5号に基準の細目がある。

また、その他の細目が前段の告示「避難器具の設置及び維持に関する技術上の基準の細目」に規定されている。以下、告示の内容を中心に、簡単にまとめると以下の通りとなる。

○ 避難はしごを設置する開口部(壁)について、
・高さ0.8m以上×幅0.5m以上又は高さ1.0m×幅0.45m以上
・開口部の下端は床から1.2m以下(高さが1.2m以上の場合はステップ等を設ける)
・開放状態で固定できること
○ 避難はしごを設置する開口部(床)について、
・開口部の大きさは直径0.5mの円が内接できる大きさ以上
○ 降下空間(避難器具設置階から地盤面まで器具周囲に確保すべき空間)について、
・ハッチ用吊り下げはしごはハッチの開口部面積以上
・その他のはしごは幅が縦棒の外側0.2m×奥行きがはしご面から0.65mの角柱形の範囲
・降下空間と架空電線との間隔1.2m以上確保
・下ぶた避難器具用ハッチの下ぶたの下端は、開いた場合に床面上1.8m以上

なお、避難階に必要な避難空地、避難通路については、ハッチ用吊り下げはしご・その他のはしごとも、降下空間の最大幅員が必要となる。その他のはしごの場合、幅が1.0mを超える場合は、有効幅員は1.0m以上が必要となる。

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避難はしごの設置緩和

避難はしごは避難器具のひとつであるから、消防法施行規則第26条に規定されている設置の緩和が適用される。そのうち、第1項~第4項は設置個数の減免、第5項~第7項は設置の免除となっている。

ここでは詳しい解説は省略するが、簡単にまとめると以下の通りとなる。

○ 設置個数の基準における収容人員の倍読み(第1項)
○ 避難階段・特別避難階段の設置による減免(第2項)
○ 渡り廊下・屋上避難橋の設置による減免(第3項・第4項)
○ 用途・構造・規模による設置免除(第5項)
○ 小規模特定用途複合防火対象物における設置免除(第6項)
○ 屋上広場の設置による設置免除(第7項)

 

その他の避難はしご

ここまで、消防法上の避難器具としての避難はしごについて解説してきた。最後に、それ以外の理由から設置が必要となる避難はしごについて解説する。

ただし、これはいずれも避難器具が必要とされるケースであり、必ずしも避難はしごに限った話ではない。しかし冒頭に解説した通り、避難はしごは避難器具としてひろく用いられているため、ここで解説する場合でも、避難はしごが使用されていることがほとんどである。

実際の建築物においても、たとえば避難器具が必要とされない11階以上の階に避難はしごが設置されていたり、収容人員からみても明らかにはしごの個数が多かったりすることがある。

これらの多くはこれから解説する理由により設置された避難はしごであると考えられるだろう。

避難上有効なバルコニーに設置する避難はしご

建築基準法において、2以上の直通階段の設置を緩和するために、避難はしごを設置するケースである。建築基準法では、一定の建築物に避難階又は地上に通ずる2以上の直通階段を設置することを求めている。

ただし、建築基準法施行令第121条第1項第6号イおよび第3項において、「避難上有効なバルコニー」等を設けた場合においては、その設置、または階段へ至る経路の重複距離の緩和がそれぞれ規定されている。

この避難上有効なバルコニーについては、条文上の定義がないため、日本建築行政会議が「建築物の防火避難規定の解説」においてその構造を示している。バルコニーについての7項目を以下に示す。

① バルコニーの位置は、直通階段の位置とおおむね対称の位置とし、かつ、その階の各部分と容易に連絡するものとすること。
② バルコニーは、その1以上の側面が道路等又は幅員75㎝以上の敷地内の通路に面し、かつタラップその他の避難上有効な手段により道路等に安全に避難できる設備を有すること。
③ バルコニーの面積は、2㎡以上(当該バルコニーから安全に避難する設備の部分を除く。)とし奥行きの寸法は75㎝以上とすること。
④ バルコニー(共同住宅の住戸等に附属するものを除く。)の各部分から2m以内にある当該建築物の外壁は耐火構造(準耐火建築物にあっては準耐火構造)とし、その部分に開口部がある場合は、特定防火設備又は両面20分の防火設備を設けること。
⑤ 屋内からバルコニーに通ずる出入口の戸の幅は75㎝以上、高さは180cm以上及び下端の床面からの高さは15㎝以下とすること。
⑥ バルコニーは十分外気に開放されていること。
⑦ バルコニーの床は耐火構造、準耐火構造その他これらと同等以上の耐火性能を有するものとし、かつ、構造耐力上安全なものとすること。

各行政においても上記の基準に準じた運用がなされているケースが多い。この基準②におけるタラップその他の避難上有効な手段として、避難はしごが設置されているわけである。

特定共同住宅等に設置する避難はしご

消防法において、消防用設備の設置を緩和するために、避難はしごを設置するケースである。
共同住宅などにおいては、消防用設備に関して、設置の緩和規定がある。

過去には通知にもとづく特例であり、通知番号をとって「~号特例」などと呼ばれていたものである。したがって、行政ごとにその取り扱いにも相違があった。

現在は総務省令第40号「特定共同住宅等における必要とされる防火安全性能を有する消防の用に供する設備等に関する省令」(平成17年3月25日)となり、全国一律の運用がなされている。

この省令により緩和が適用される建築物のうち、消防庁告示第3号「特定共同住宅等の構造類型を定める件」(平成17年3月25日)に規定される「二方向避難型特定共同住宅等」において、バルコニー等にハッチ用吊り下げはしご、救助袋等の設置が規定されている。

つまり、「二方向避難型特定共同住宅等」の基準に適合させ、消防用設備の設置を緩和するために、避難はしごを設置するケースがあるということである。

条例などにより設置する避難はしご

消防法とはまた別に、各行政が定める火災予防条例などの独自の基準により、避難はしごを設置するケースである。消防法では、第17条第2項において、地方の気候や風土の特殊性を考慮して、施行令とは異なる基準を定めることを認めている。

これにもとづき、各自治体では独自に火災予防条例や、消防法の運用基準を定めていることが多い。その中で、避難はしごの設置が必要となる場合がある。

よくあるケースでは、避難器具の設置基準やその緩和規定にかかわらず、共同住宅では必ず二方向の避難経路を確保すること、といった基準である。

その場合、階段が一つの建築物においては、バルコニーに避難器具の設置を求められ、避難はしごを設置することになる。

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最後に

ここまで、消防法上の避難器具である避難はしごについて解説してきた。避難はしごは避難器具の中でも一般的なものであるだけに、設置する機会も多い。その設置基準についてはしっかり理解しておきたい。

また、ここまで解説してきた内容はすべて法及び施行令の範囲内での基準であり、各行政の独自基準は含まれていない。したがって、上記の内容だけでは、最後に解説したような、各行政の独自基準は満足できないこともあることには注意していただきたい。

計画にあたっては、事前の調査と、所轄行政との十分な事前協議が必要である。

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